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ハロウィン妄想と恋人たちの時間02
「さっきの真に受けるなよ。斉藤は意外と素直だから」
「相庭ぁぁ……っ!」
好き! 好き! 大好きぃ!
そうなのだ。俺は相庭が好きすぎる。
好きの「す」が頭に浮かんだ瞬間にはもう体が動いているくらい。
思い切り抱きつくと「痛い痛い」と押し返される。
もちろんしがみついたままテコでも動いてやりませんが!
「忍ちゃん俺と付き合って」
「ハイハイ。クリスマスまでに彼女が欲しくてイメチェンしたわけか」
「訳知り顔でスルーすんのやめて!?」
百パーセント冗談だと思っている相庭が、顎に指を添えて笑う。なにそれまぶしすぎるやめて。こっちはまんざらでもないのに。
もう近頃は相庭の隣にいるだけで一日中テンションが上がったりする。
こんなのおかしいってわかっててもどうにもならない。
意外と低めの平坦な声とか、爽やかな柔軟剤のにおい、俺が相手だからと侮ったりしない言葉選びも、全部、もれなく、きゅんとくる。
こんな絶滅危惧種のヤマトナデシコが優しくしてくれたら、もう異性じゃなくてもムリでしょ。
しがみついたまま相庭の肩に顎を乗せて「そういえば」と話題を変える。
「クリスマスはまだいいとして、ハロウィンパーティー的なのやんない?」
「……どうせ合コンだろ。パス」
「合コンじゃないですぅ~」
「じゃあなに?」
「えっと、宅飲みとか?」
「もうそれハロウィンじゃなくていいよね」
思った以上にノリの悪い相庭にむっとする。
「仮装できるのはハロウィンだけだもん! 仮装宅飲みしよーよねえねえ!」
「なんで家で仮装?」と首を傾げながら、「もう離れて、重い」と相庭が抗議の声をあげる。もう少し忍ちゃんとくっついていたいという下心は、突然割り入った邪魔者によって、あえなく打ち砕かれた。
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