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ハロウィン妄想と恋人たちの時間12
「相庭って周りの人間と同じフィルターで人を見ることがないから。集団の中の立ち居地とかあんまり気にしないで接してくれるじゃん」
「それって、空気読んでないだけなんじゃ……」
「はは、確かに。当人からしてみれば読まないでほしい空気ってあるんだ。俺みたいな冴えない男は、かわいい彼女ができたら不釣合いだし、愛想尽かされないように頑張れよって目で見られるのが仲間内での共通認識で、俺はそれが居心地悪くてつらかった」
若奈の名前を出さずとも簡単に伝わってしまうのが、長年親友を続けてきたつらさだと思いながら、それでも話を続ける。
「斉藤も一緒だよ。モテないって言われて、女の子たちに軽くあしらわれたり、男にはマウントとられたりで、お調子者っぽく振舞ってるけど嫌な気がしてるんだと思う。そんな状態で相庭だけが自分のこと大切に扱ってくれるんだから、好きになっちゃうだろ」
逃げられるかな、と思いながら手を伸ばし、相庭の頬に触れる。とくに嫌がる様子もなくされるがままだ。眉間に刻まれていた皺は、いつの間にか消えていた。
「俺、大切に扱ってるなんて言われるようなことしてない。椎名の言ってることって、全然違う人のことみたいでよくわかんないよ」
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