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後日談~弟くんへのご挨拶(椎名視点)3
「相庭くんちょっと待って」
「…………なに」
「今ので足りた?」
「えっ」
「君は今のキスで満足したんですか」
大真面目に言うと、相庭が唇を尖らせた。
「ふざけんのやめろよ! 俺ほんとに――」
「ふざけてないよ。おいで」
「だから俺――」
「相庭、ほら、おいで」
相庭の抵抗を無視して両手を突き出した。
免疫がないのはわかっているが、こちらだって触れ合いたい。
肌の距離を縮めることで、心の距離も早く縮めてしまいたかった。
いわゆる『おいでポーズ』を向けられて、また「うっ」と詰まる気配がした。
数秒見つめ合ったままポーズを崩さないでいると、おずおずと相庭が近寄ってきて、身体の側面にぴったりくっついた。
その仕草は可愛らしいが――。
「違うそうじゃない」
「えっ、違うの」
こっちに来いという意味ではなかったのかと、羞恥の色を走らせる相庭に、いや合ってるけどそうじゃない、と弁解しながらその細腰をひょいと掴んだ。
太腿の上に向かい合う形で相庭を乗せれば、当の本人はまた目を大きくして驚いている。
「これが正解です」
「ばかっ、なんだよこの体勢」
「名付けて恋人座り」
「名付けんでいい!」
「じゃあ対面座位」
「よっ、よよ余計悪いわ!」
あーあ、と心の中で呟いてしまうほど、相庭の取り乱し方が尋常ではない。
耳までピンク色に染めて、今にも泣き出しそうな表情でこちらを睨んでいる。
――わかってるのかな、エッチなことしてる時と同じ顔だって。
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