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後日談~弟くんへのご挨拶(椎名視点)8

「相庭の恋人は俺だよね。じゃあ相庭を甘やかしていいのは俺だけだ」 「でも……その、恥ずかしいし、それに……」 「それに?」 「円ちゃんは家族だから、ウザくても、めんどくさくても、見捨てられたりしないけど、……椎名は違うから。俺、椎名に愛想尽かされたら、絶対立ち直れない……っ」 「相庭……」  不安そうに潤んだ瞳でそんないじらしい事を言われるなんて、想像もしていなかった。 単純に円だけにしか心を開いていないのではなく、自分に嫌われたくなくて彼は必死なのだ。 たまらない気持ちになり、衝動を堪えきれず飛びつくと、押し倒すような体勢でそのまま床に倒れ込んだ。 「ばかだな。愛想尽かすわけないだろ。そんなことで怖がんなくていいから」 「でも俺、円ちゃんにも呆れられるくらい、ものすごい甘ったれだし」 「大丈夫。甘えんぼな子好きだから」 「すぐベタベタするし――」 「むしろどんどんやって」 「好きな人が傍にいてくれるだけで贅沢なのに、これ以上なんて――」 「え……」  溢れんばかりの涙の粒が、目尻の際で揺れている。 組み敷いた腕の下にいる男を見下ろしながら、ぎゅっと心臓を掴まれたような甘い痛みに、息を飲んだ。 「あー、あーあーあー、もう……っ」  絞り出した声は掠れていたが、意味のない音を吐き出すことで、なんとか冷静さをつなぎ止める。 嬉しいし、どうしようもなく愛おしいけれど、そんなのちょっと寂しいじゃないか。

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