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新年SS 01
ちょうど一年前の元旦は、まだ椎名と付き合いたてだった。
形式だけの恋人として過ごしたあの日の感情が、胸の底に根を張り、いまだに鈍く疼く。
隣に椎名がいるのに、苦くて、甘酸っぱくて、ひどく寂しい夜だった。
骨の芯まで凍り付きそうな冷気に、体がぶるりと震える。
真夜中にも関わらず、今年もどこから湧いてきたのかと思うほど人が溢れ、神社はごった返していた。
「相庭、寒い?」
「……超寒い」
鼻の頭を真っ赤にしながらズズっとすすると、椎名が思わずといった風に吹き出した。
「相庭は寒がりだよな。ほら、手貸して」
笑いながら右手を掴んできた椎名に慌てたが、引っ込める間もなく彼のポケットの中に導かれた。
そのまま握りこまれてドキリとする。
「し、椎名、人がいっぱいいるから……」
「大丈夫。こんなに人がいたら目立たないし、見られても関係ない」
「でも……っ」
焦って椎名を見上げると、ムッとした表情で耳元に唇を寄せられた。
「俺は手をつなぎたいんですけどー」
小学生のような口調で抗議され、気にするのもバカらしくなってくる。
「なら、いい」と不器用に返すと、頭上で微かに椎名の笑う気配がした。
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