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新年SS 03

「相庭、順番来たよ」 繋いでいた右手をトントンされ、我に返った。 慌てて椎名のポケットから手を引き抜き、財布を取り出す。 少し悩んでから、去年と同じように千円札を賽銭箱に突っ込んだ。 派手な柏手と九十度の礼。願ったのは去年と同じことだった。 ――椎名に本物の良縁を与えてください。本物の幸せを与えてください。 もし今が椎名にとって間違いなら、これで軌道修正が入る。 もし一緒にいられれば、少しくらいはこの関係に自信が持てる。ほんの少しくらいは。 「今年は何を願ったの」 「……椎名がいい恋愛をしますように」 「また俺たちのこと願ってくれたんだ」 「うん」 椎名が大きくない目を思い切り細め、口元を緩めた。 無言のまま右手を引かれ、またポケットの中で繋がる。 指を絡めてにぎにぎされると、心細さが安堵に変わった。 「俺さ、去年はなんにも願わなかったんだ」 寒さに肩を竦めながら椎名が言った。 自嘲気味に白い息を零し、親指で触れ合った皮膚の表面をすりすりと撫でる。 「愛情って幻みたいに頼りないものだったんだなって実感して、確かなものなんてどこにもないのに、何かを願うことに意味はあるのかって」

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