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新年SS 04
「……そんなこと思ってたんだ」
失恋の傷口がまだ塞がらず、椎名も複雑な心境だったらしい。
まったく違う方向を向いた二人が、互いに痛みを抱えたままこの場所に並んでいたことを思うと、また胸が疼く。
「でも、相庭が俺の隣に残ってくれたことだけは、死ぬほど感謝した。縁の糸を切らないでくれてありがとうございますって。それだけ神様に伝えた」
「……そ、れは」
思いがけない言葉に目を見開く。
それが愛と呼べる想いではなかったとしても、こみ上げてくるものがあった。
うまく会話を続けられず、湧き上がった感情を零さないように、喉の奥で転がした。
椎名は気に止めることなく「今年はさ……」と声を潜めて言った。
「今年は、相庭にもっと好きになって貰えるように、頼りがいのある男になるって宣言してきた。……ん? あれ、これお願いじゃないか」
失敗した、と呟きながら椎名が一笑する。
けれど、もっと好きに……の意味がわからず、首を傾げた。
一方的にずっと椎名を想い続けてきて、これ以上なんてことになったら、醜く歪んでねじ曲がってしまいそうだ。
「俺は……これ以上好きになりたくない」
「……どうして?」
搾り出すように告げると、椎名が訝しげな視線をよこした。
みっともなくて正直に言うのははばかられるけれど、守るほどのプライドもない。
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