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新年SS 05
「……終わりたくないから! 好きが大きくなりすぎたら潰れそうで怖い」
戒めの気持ちが強く溢れ出したせいで、吐き捨てるような口調になった。
慌てて口元を抑えると、椎名が悲しげな瞳でこちらをじっと覗き込む。
「それって終わりを意識してるってこと?」
「え……」
「無理、むりむりむり、そんなの絶対無理」
「……いっ」
無意識だったのか、繋いだ手を椎名に軋むほど握られ、眉を顰めた。
「あ、ごめん」と反射的に離れされた指が外気に触れる。
刺すように冷たい夜気が、指先の感覚を奪った。
「し、椎名……?」
自分より高い位置にある男の顔を覗き込むと、ひどく深刻な顔をしていて驚いた。
椎名はハッとして、決まり悪そうに頭をかく。
「ごめん、なんか……ダメになった恋愛のこと思い出して。……なんでもさ、一人で頑張ったり、我慢したり、遠慮したりするのだけはだめだから。それやったらいつの間にか糸が切れちゃうから。俺それだけは無理。この糸だけは切りたくない」
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