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新年SS 06
胸をぐっと抑えながら搾り出すように告げられた言葉が、心に突き刺さった。
今椎名の脳裏をよぎったのは、若奈とのことだろう。
こんなに不安げな表情を見るのは久しぶりだ。
よほど深く傷ついた経験がなければ、こんなことにはならない。
「依存なのか純粋な愛情なのかわからないくらい執着してるとは自分でも思うけど、俺はそういう弱い男で……それでもずっと相庭の隣にいたい。だから、ちょっとぐらい“好き”が歪んでも嫌いにならないし、むしろ独占欲とか嫉妬とか見せてくれたほうが安心する」
「安心……。そっか、そうだよな……」
自分にはこんな風に感情をさらけ出すようなことはできなかったけど、椎名が見せてくれた弱みは、鬱陶しくも醜くもなく、ただひたすらに優しい歪みだった。
変に力んでいた体の力が抜けて、嫌いになるどころか、むしろホッとする。
椎名が求めてるものはきっとこれなんだろう。
だからこそ、先に手の内を明かしてくれたのだ。
「俺ほんと、未熟でごめんな」
温もりを取り戻すように、自分から椎名のポケットに手を突っ込んだ。
離れても何度でも繋がれる。
握り返してもらえる。
だから、自分も怖がっていちゃいけない。
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