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新年SS 07

踵を返し、二人並んで帰路に着く。 右腕に感じる椎名の体温が勇気をくれた。 「俺、本当はこう願ったんだ。椎名に本物の良縁を与えてください。椎名に相応しくない縁は切ってくださいって」 「え……っ!?」 隣で驚いた気配がする。 縁を切れだなんて、少しばかり物騒な物言いに面食らったようだ。 「去年は、椎名がよりを戻すか彼女を作るかして、早く俺と離れればいいって思った。今年は、一年も付き合ってそろそろ目が覚める頃なんじゃないかって怖くなった。こうして願いをかけて、それでも側にいられれば、俺が隣にいてもいいんだって再確認できると思った。自分のことばっかりでごめん」 さっきまで絶対に見せられないと思っていた一年越しの本音を、スラスラと口にできた自分に驚きつつ、やけにスッキリとした気持ちで言い切った。 椎名は絶句している。 口を覆うように手をあて、しばらく考え込んでから、覇気のない声でぽつりと言った。 「なんで……相庭がそこにいないの。隣にいるのにそんなこと考えてるなんて、なんか悲しい。俺が」 「……うん。ごめん」 「でもちゃんと話してくれてありがとう。知らないままだったら相庭を失ってたかもしれないと思うとぞっとする」 「いや、椎名が選んでくれる限りは隣にいるし」 「だからそういうの。俺そんな刹那的な気持ちで付き合ってない。もっと同性と付き合ってる俺の本気を思い知って」

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