7 / 9

屈辱1

  狭い檻の部屋から出ると広い空間があった。そのまま歩かされて、また扉を開けるとそこはバスルームだった。 広いバスルームには大きなバスタブと天井から垂れ下がる数本の鎖、そして黒い拘束椅子が置かれていた。困惑した顔でバスルームを見回した犬塚を竜蛇が抱え上げた。 「何を……あ!」 竜蛇は犬塚を椅子に座らせて、上半身をベルトで椅子に拘束した。咄嗟に竜蛇を蹴り上げようとした犬塚の脚を掴み、足枷を嵌めて天井から下がっている鎖に繋いだ。 犬塚は大きく脚を開いた状態で椅子に拘束されてしまった。 「外せ! 変態野郎ッ!」 犬塚が暴れる度にガチャガチャと鎖が不快な音を立てた。 竜蛇は一度、犬塚の視界から消えた。ジャケットを脱いで袖を捲り、バスルームの壁際に置かれたシルバーのキャスターワゴンから何かを手にして戻ってきた。 「犬塚。排便を我慢していたんだろう。さすがに檻の中では垂れ流しはできなかったか。ここでなら出してかまわない。我慢は体に良くないぞ。出して見せろ」 「なにを……!?」 竜蛇は何でもないことのようにさらりと言ったが、犬塚はぎょっとして竜蛇を見上げた。 竜蛇が持っているのはガラス製の浣腸器だった。犬塚は竜蛇が何をするつもりか気付いて蒼白になる。 「やめろッ! 来るな! 俺に触るなッ!!」 全力で暴れだした犬塚を竜蛇は涼しげな眼差しで眺めながら、犬塚のアナルにローションを塗って準備をした。 どれほど暴れても拘束は外れない。ガチャガチャと鎖が音を立てるだけだ。 「じっとしていろ」 「嫌だ! 嫌………ひぃっ!」 竜蛇は犬塚のアナルに浣腸器をつぷり、と挿入した。 そのおぞましさに犬塚は硬直する。 硬まったままの犬塚に竜蛇はゆっくりとグリセリン溶液を注入していく。 「………っあ! やめっ……やめろぉ………ッ!!」 犬塚は首を左右に振り、動けない体の代わりに言葉で抵抗するが、竜蛇はおかまいなしに200mlのグリセリン溶液を注入しきった。 吊り上げられた犬塚のすらりとした脚がピンと硬直して、ひきつった腿の筋肉が卑猥だった。    「……うぅッ」 浣腸器を抜かれた犬塚はぎゅっと尻に力を入れて漏らさないようにアナルを締めた。目の前で漏らすような無様な真似をこの男に見せたくはない。 竜蛇は浣腸器をワゴンに戻し、今度は黒のアナルプラグを手に取った。苦痛にきつく目を閉じていた犬塚は気付いていない。 「力を抜け」 「うあッ! なにを!?」 犬塚はアナルに押し付けられた異物の感触に驚いて目を見開いた。 「俺の前で漏らすのは嫌なんだろう。我慢しやすいように手伝ってやる」 「やめろッ! やめっ………ひ、痛っ!」 竜蛇はアナルプラグを強引に押し込んだ。無理矢理拡げられたアナルにチリチリとした痛みを感じ、犬塚は唇を震わせる。 そこを嬲られるのは性玩具として飼われていた子供の頃以来だ。 ………いや、初めての発情期にブランカに触れられた事がある。 ─────違う。ブランカはオモチャのように俺を嬲ったりはしなかった。こんな奴とは全然違う!  「他の男の事は考えるな」 パンッと軽く頬を張られ、犬塚は苦渋に満ちた顔で竜蛇を睨み付けた。 「殺してやる!」 「お前にそう言われるとゾクゾクするね」 「あっ、あ!!」 アナルプラグで中を抉るようにぐりっと回されて、犬塚は喉を反らせた。 竜蛇は苦痛に歪む犬塚の顔を楽しそうに見ている。 「抜いてほしければ可愛くおねだりしろ。楽にしてやる」 圧迫感に脂汗を浮かべた犬塚の額を手の甲で優しく撫でて、竜蛇は甘く囁いた。 「う、るさい。俺に触るなッ、出ていけ………!」 排泄感と圧迫感に耐えながら、お前には屈しないと態度を崩さない犬塚に竜蛇は笑みを深めた。 「わかった」 竜蛇はアナルプラグのバイブのスイッチを入れた。卑猥な振動に犬塚の裸身がビクンッと大げさに跳ねて、また鎖がガチャガチャと鳴った。 「ひ、あぁう! やめっ、あ!」 「お望み通り、一人にしてあげよう」 「あっ、待てッ!………ぅうッ! は、あ! 竜蛇ァ!」 竜蛇がバスルームから出ていくのを犬塚は絶望的な眼差しで見た。 再び一人きりにされ、排泄感とバイブの淫らな責め苦に犬塚は身悶える。 ─────嫌だッ! 嫌だ、こんな………ッ! 腹がきゅるきゅると鳴り、排泄感は切羽詰まるほどに高まっている。だがアナルプラグに塞がれて排泄する事ができない。 それに一定のリズムで振動するアナルプラグに犬塚は奇妙な感覚に陥りつつあった。 「………ぁあ……う、ふぅ………ッ」 拉致され監禁され、スカトロプレイを強要されている現状から逃避するように、犬塚の肉体は僅かな快楽を拾い始めていた。 「は、はぁ………嫌だ、違う……こんな………嫌だぁ……ッ!」 幼い頃、金持ちの変態男に仕込まれた体は快楽に弱い。だからこそ犬塚はセックスを嫌悪し、誰とも関係を持たずに生きてきた。 自慰ですらほとんどしない。強めの抑制剤で自分をコントロールしてきた。だが今は……… 「あ………あ、やぁ………は、うぅッ!」 犬塚の苦痛に満ちた声に甘い響きが混ざり始めていた。時折、爪先がピクッと痙攣するように跳ねた。 排泄感に腹が痛みを訴えている。アナルは苦痛と紙一重の快楽に収縮を繰り返し、アナルプラグをきゅうと締め付けた。 「………ち、くしょ……も、嫌だッ………もぉ嫌だ、嫌だァッ!」 排泄感と快楽に追い詰められた犬塚は、静かにバスルームに戻ってきた竜蛇に気付かなかった。

ともだちにシェアしよう!