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放課後グラサージュ
望月さんと連絡先を交換してから、毎日メッセージのやりとりをしている。
休店日の前日に連絡が貰えるようにっていう理由だったはずなんだけど、望月さん優しいし俺の話聞いてくれるし、メッセージのやり取りがこんなに楽しいなんて知らなかった。
今日は1限から講義があって、先に来ていた幼なじみの昴と八雲さんがいる3人がけの席に座る。
いつもなら怠くて遅刻かサボるところのに、最近寝起きがスッキリでちゃんと出席してる。
「海、最近いいことあった?」
席についてノートを取り出してたら、右隣、真ん中に座ってる幼なじみの昴 に話しかけられた。
「え、わかる?」
「海っていいことあると遅刻しないって知ってた?」
「マジか、知らなかった……無意識すげぇな」
さすが幼なじみ、俺のことをよくわかってる。
ちなみに昴はいいことがあると鼻歌を歌うんだけど、まあこの事はしばらく俺の胸に秘めておこう。
「いいことなくても講義には出ろよ」
昴の向こう側からジト目で睨んでくるのは、低血圧で機嫌が悪い八雲さん。
朝の八雲さん本当に人を殺せそうな目をしてるから、できればあまり関わりたくない。
触らぬ八雲さんに祟りなしだ。
あー早く講義終わらないかな。
今日は望月さんに会いに行くつもりで早起きだって――。
あれ?
待って……俺、もしかしてスイーツのためじゃなくて、望月さんに会いに行こうとしてる?
気がついた瞬間、ぶわっと顔が熱くなった。
いや、まだそうと決まったわけじゃない。
望月さんみたいな兄貴がいたらいいなって思うし、憧れ。そう、憧れだ。
望月さんは知的な雰囲気でかっこいいし、店に行けば優しく話しかけてくれるし、作るスイーツは美味しいし、メッセージだってマメに返してくれるし…。
うんうんと自分で自分に納得して、どこか上の空で講義を聞いた。
「海、今日望月さんのところ?」
講義が終わった後、昴にそう聞かれて心臓がドキっと跳ねた。
この幼なじみは悪意なく確信を突いてくる。
「正確には望月さんのスイーツ」
「え、そうなの?」
「他になにが…」
「望月さんのこと好きになったんじゃないの?」
「ゴホッ!」
「なに、矢吹好きな人できたの」
悪意のない幼なじみに、にんまり顔の八雲さん。
だめだ、これは今日望月さんのところに行けなさそう。
俺も八雲さんと付き合う前に南のことめちゃくちゃ後押ししたことあるし、これはいつか来るべき洗礼だったと思うことにしよう。
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