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第16話
あの日の続き、あの日の続きとは?あの日ってどの日?なんて現実逃避を一応行っては見るものの、あの日なんてもうあの日しかない。
「む、むり」
「まだ男とか女とか気にしてる?」
「そ、それもある、けど…」
「けど?」
「は、恥ずかしい…!」
顔を赤くしながら目線を彷徨わせる大瀬に、本気で言っている大瀬とは対照的に堀田は煽られているようにしか思えなくて思わず瞼を閉じてふー、と自分を落ち着かせるべく息を吐く。
「てか、体見たら、萎えると思う…ほんとに男だし…」
「またそういうこと言う」
目を伏せて息を吐く堀田をみて、大瀬は不安そうな顔で堀田を見つめる。そんな大瀬をみて堀田は緩やかな笑みを浮かべた。
堀田は大瀬の太ももに手を這わしてするりと撫でると、大瀬はふるりと体を震わせた。履いていた細身のジーンズを脱がされると、堀田は固まり、大瀬は声にもならない声を上げながら悶えた。
「…下着もさ、女物履いてるの?」
「………恥ずかしすぎて死にそう」
まさかこんなことになるなんて思っておらず、大瀬は癖でいつものように女物の下着を履いてきてしまった。
赤いシルクのショーツがぴっちり大瀬の股間を覆っている。ブラジャーまではしてないが、堀田にとっては十分刺激的な光景だった。
「これさ普段も履いてる?会社のときとか」
「さ、すがに履いてない…女装してる時だけ。全身女装してるのに、下着だけ男物って中途半端で違和感あったから…」
「よかった。次出勤したとき、あのスーツ姿の大瀬さんの下着がこんなのだったら俺仕事に集中できなかった」
するりとショーツの上から性器を撫でられ大瀬はいろんな意味で震えた。本当に男の自分でも大丈夫だろうか、という不安は払拭できない。それでも堀田は、気持ち悪がるような素振りは一切見せずに少しずつショーツを押し上げてくる性器を愛しそうに指でなぞり、その度に体を跳ねる大瀬の姿に笑みを浮かべる。
「これ、脱がすのもったいないなあ。大瀬さんにすごく似合ってる」
「…ほんと?」
「ほんと。赤色、かわいいね」
褒めれば、嬉しそうに、それでいて照れているような恥ずかしそうな顔で大瀬は破顔し笑顔を浮かべた。ようやく、久しぶりにみることができた笑顔に堀田は胸をときめかせ、たまらない気持ちになる。
「かわいい、かわいいよ。普段の大瀬さんも、女装してる大瀬さんも、かわいい」
「…う、嬉しい。キミにそうやって褒められるのが、一番嬉しい」
「キミ、ってやめない?ユキちゃんのときは名前で呼んでくれたよね」
少し不満そうな顔で堀田が言う。
たしかに大瀬は、『清史郎さん』とユキのときは呼んでいたが、それはユキだから呼べただけであって、今のこのいっぱいいっぱいの頭では到底できる気がしない。
「ほ、堀田さん」
「えぇ?」
「なまえは…名前はもうちょっと待って…今もう頭がこの状況に追いつくので精一杯…」
「うーん…しょうがないな」
すぐに諦めてくれたため、大瀬はほっと息を吐く。けれども少しずつ反応している性器を見られているのには変わりはなく、羞恥心は増していくばかりだ。
「こら、隠さない」
「だって、…」
「脱がすよ」
自然と足は内股になり股間を隠すようにするがそれを堀田によって咎められれば、大瀬は困ったような顔をして堀田を見つめる。
堀田は肌の感触を楽しむのように触れながら、ショーツを脱がしていった。他人に脱がされるのはもちろん初めてである。するするとショーツが体に触れて下に下ろされ、冷たい空気に股間が触れると体がぴくりとびくつく。
そんな大瀬の反応に堀田は小さく笑うと、大きな暖かい掌で性器に触れた。
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