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第4話
ただいま、放課後。
ごくり、と生唾を飲み込む。
友人からは『美しい顔が台無しだよー』と言われるくらいに、顰めっ面をしているらしい。
何故なら、俺はこの後大っ嫌いな人に自分から話しかけに行かなきゃいけないからだ。
よくよく考えれば、俺から話しかける時はいつも嫌味だけだった。
だけどあの人はそんなの気にも止めず、挨拶だけはちゃんとしてきてた。くそ、何か負けた気がする。
「あ⋯⋯」
「あれ、桜音。二年の棟にいるなんて珍しいね?童貞捨てる彼女でも探しに来た?」
「ふ、ふざけた事言わないで下さい!下半身ユルユルなアンタとは違うんですよ!」
前から来た桃神先輩は出会い頭に嫌味。
周りを取り巻いていた女子達は「やだ〜」とか「そんな訳ないじゃ〜ん」とか言っている。ミカ先輩まで何やってるんだ。
思わずカッとなって言い返してしまったけれど、本題に移らないとここまできた意味がなくなる。
「なあ。話があるんですけど」
「へ?俺に?」
「アンタ以外に誰がいるんですか」
「えーと、この女の子たち?」
「いいから来てください」
ポカンとしている桃神先輩の腕をとって歩き出せば、先輩は呑気に女子達にじゃあね〜と手を振っている。
「お前から話しかけてくるなんて珍しいね。生徒会で急ぎの用事?」
そう言いながら、いつの間にか入れ替わった立ち位置。
これじゃあ俺が手を引かれてるみたいじゃないか。
しかも足取りはなぜか生徒会に向かってるし。
「⋯⋯人が来ない教室」
「へ?」
「人が絶対来ない所に連れてけって言ってるんですよ!」
「ふぅん?分かった」
先輩はそう言って意味ありげな笑みを浮かべて方向転換をした。
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