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第2話
「絶対、こっちには来ないでくださいよ」
「えー?ここ俺の部屋なんだけどなぁ」
ご飯を食べ終え、ちゃっかりお風呂まで入った桜音はもう寝る気満々で。
勝手に俺のベッドを占領したあげく、部屋の半分からは近付くなと言う。
我儘な女王様じゃない?この子。そんな所も可愛いけど。
⋯⋯え、俺今、可愛いって思った?
「⋯⋯聞いてるんですか、バカ王子」
目の前で腕を組みながら、訝しげにこちらを見る桜音。
生意気な後輩⋯だよね?
「ちょ、ちょっと、何ですか」
顔から急に笑みを消した俺に不穏な気配を感じたのか、ベッドの上で後退りをする桜音。
何故かその仕草に唆られる。逃げられるほど追いかけたくなる、みたいな。
ギシッ⋯⋯
ベッドに手をついて距離を詰める。
壁際に追い詰められた桜音がキョロキョロと視線を彷徨わせる。
「桃神先輩、お、怒ったんですか?⋯じょ、冗談なら⋯⋯」
「桜音」
ビクリと俺の呼びかけに桜音の肩が跳ねる。
怯えた表情も嗜虐心を擽るだけ。
そろりと桜音の頬に手を添える。もう片方の手は壁について、完全に桜音を閉じ込めた。
「ね、キスしてもいい?」
「っはぁ?!や、嫌に決まってるじゃないですか!」
「一回だけ。ね、お願い。桜音の秘密、誰にも言わないから」
「⋯っ、クソ、一回だけ、だからなっ!」
俺の中にある違和感を確かめたいが為に脅したのはごめん。
心でそう謝って、桜音に更に近付けばギュッと目を固く瞑っていた。
あぁ、やっぱり。
「——可愛い」
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