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虚しさと熱(龍之介side)
安堵とともに身体の奥深い場所から猛烈な飢えが襲ってきた。
こちらの変化に真っ先に気づいたのは、誰もが認める美形のルイだった。
冷めた態度はどこへやら、いつになく興奮した面持ちで身を乗り出してくると、下肢の間で息づくこちらの熱に触れ、うっとりと服の上から握り込んだ。
いいな? と視線で問われ、好きにしろと投げやりに目を閉じた。
質量のある熱い塊を布の奥から取り出したルイが、アイスキャンディーのように音を立てて美味そうにしゃぶり出す。
「ルイばっかずるいっ。じゃあオレはこっちな!」
小柄で俊敏な小動物を思わせるマコトが唇に吸いついてきた。
「マコ……オレ…も……」
ハルトがか細い声で訴える。
「かわいそーだけど、ハルは運転があるからなぁ」
「……でも…オレ、我慢…できな…っ」
「ふ…っ、自分のでも擦ったらどうだ?」
ルイが目の前の熱から唇を離して、意地悪そうに笑った。
「……嫌だ。リュウのが…イイ……」
「はっ、普段はカタコトのくせに、こんな時だけよくしゃべる」
明らかな悪意を含むルイの言葉に、ハルトは悲しげに喉を震わせ、オドオドと目を泳がせたが、結局は発情した己の身体に負けたようだ。
泣き出しそうな表情でバックミラー越しにこちらを見つめると、自らの下肢をくつろげ始めた。
「……ハル、ヤんなら自動運転に切り替えろ。つっても一応は目ェ離すなよ?」
後でご褒美やるから、しっかり役目を果たせとバックミラー越しに目で語れば、ふにゃ……と涙目で笑い、頷いた。
「まったく、イライラするヤツだ……うっ」
ため息をついたルイの後頭部に手をかけて、グッと喉奥に己の雄を突き入れた。
「ぜんぜん、足ンねェ。……オラ、もっと気合い入れてしゃぶれ」
グイグイと喉の奥を突かれながらも、いつにも増して濡れたこちらの声に、ルイの瞳と身体もまた濡れていくのがわかった。
「ふ…っ、んぁ…」
もはや全員が己の手や仲間の口や身体に、本能のままに欲望を擦りつけていた。
戦闘の後はいつでもそうだ。
生存本能が疼くのか、たまらなく欲しくなり、果ての見えない欲望に翻弄される。
「……っ」
やがて、ビシャっと白濁がルイのなめらかな頬を打っても、下肢の熱はまったく収まる気配を見せなかった。
「ほら、ルイどいてよ!」
淫らに濡れた雄の先端に唇を寄せたマコトが、ちゅうちゅうと残る蜜を吸い上げる。
はぁ……と深く吐息しながら、天井を仰ぎ、目を閉じた。
「……ンとに、全然足ンねェ……」
不意に宣戦布告したばかりの士郎の凛々しい顔が脳裏をよぎった。
簡単には堕ちてこない、狩りがいのある魅惑的な獲物。
今度の獲物はこの血を沸き立たせてくれるだろうか?
「もっとだ……、もっと深いトコまで入らせろ」
「その声、ヤバイ……っ」
実際に擦れ合う粘膜以上に耳で感じたマコトがビクビクと震えると、己の奥深くに雄を受け入れた刺激で、一気に絶頂まで昇り詰めた。
「あ……っ」
満たされない心とは裏腹に、強烈に収縮する内壁の刺激で、この日何度目かもわからない絶頂を迎えると、弛緩していくマコトの身体を支えてやりながら、ランドローバーの窓の外の暮れていく砂漠の紅い太陽を、長いことじっと見つめていた。
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