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鳴り止まない声(士郎side)
あまりの安堵に、思わず膝をつきそうになる。
克己の存在がなかったら、確実に崩れ落ちていただろう。
頭の中を、混乱と恐怖と悔しさといたたまれなさが吹き荒れて、しばらくは呼吸がうまく整わなかった。
「……シロちゃん、大丈夫?」
ソファの淵にちょこんと腰かけたままの克己が、気遣わしげに聞いてくる。
大丈夫そうに見えるかと、八つ当たりと知りながら、思わずジロリとにらんでしまった。
「止めなかったの、怒ってる? 怒ってるよね。でも、あの声で言葉責めだよ? もっと……って、なっちゃうでしょ?」
うっとりとつぶやく克己に、何だそれは……と脱力した。
「一応は止めたんだよ? でもシロちゃんってば思いのほかイイ顔してたし、いいかなって」
いいわけがない……というか、いい顔って何だ……!?
改めて猛烈な羞恥が襲ってきて、手のひらで口元を押さえた。
「照れてるシロちゃんも新鮮でいいね」
「……黙れ」
「はぁ……。煽られてシたくなっちゃったけど、シロちゃんに乱暴にしてとかムリだし、仕方ないから一人でしようかな」
見てく? と、いたずらっぽく笑う克己に、無言で自分の部屋に戻ると、乱暴にドアを閉めて、ベッドに身を投げ出した。
克己は性的に痛くないと感じない。
過去の傷がそうさせた。
いくら想いを込めてやさしく抱いてやってもダメなのだ。
他の誰かに傷つけられるくらいなら、せめて自分の手で。
本当は甘く溶かしてやりたい気持ちを抑えて、あえて冷たい態度を装ったりもした。
傷つけた分だけ、心に傷が増えていく。
もう止めたいと言いたかった。
けれどそれは、終わりの言葉とイコールで。
やがて隣室から、克己の喘ぎ声が聞こえてきた。
ただでさえ昂ぶった身体が限界を超えた。
ためらった跡、乱されかけたベルトを外し、前をくつろげた。
「……っ」
握り込むと、その刺激だけ溢れてきて呼吸が荒くなる。
そっと指先ですくい、そのまま先端に塗りこめると、ジワリと溶けるような快感が足先にまで伝わった。
「ん…っ」
思わず声がこぼれて、ヒヤリとした。
ユルユルと感じやすいカリの部分を刺激しながら、目の前のシーツを噛んで、声を殺した。
「…っ…ふ……っ」
いつもより明らかに昇り詰めるスピードが早い。
もはや先走りというには多過ぎる量の滴りが、グチュグチュと耳を犯していく。
その間も身体の奥底で、毒のように甘い声が響いていた。
「く……っ」
克己の声を聞きながらしているせいだと言い訳しながら指先の動きを早めると、一気に己を追い上げた。
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