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一筋縄ではいかない(龍之介side)

腰にタオルを巻こうとするのを、目で制した。 オレは全裸なのに、オマエはそンなン巻くのな、とバカにしたような視線を送ってやれば、怒りに燃えた瞳でにらみ返してくる。 全身綺麗に筋肉のついた身体は、いくらか着痩せするようだ。 理想的だと、目を細めた。 克己のような華奢な身体は綺麗だとは思うが、思うままに攻めたい自分には物足りない。 一晩中、抱き続けても壊れない身体がいい。 戦地で禁欲生活を強いられる反動なのか、一度始めると際限なく求め続ける自分についてこられる相手の方が珍しかった。 大抵は先に根を上げた挙句、そのまま堕ちてしまう。 反応のない身体を、それでも冷めやらない熱に浮かされるように抱き続け、翌朝目を覚ました相手の惨状に呆然としたことは数知れない。 惚れていれば惚れているだけ、行為は激しく執拗になる。 だが、けして傷つけたいわけじゃない。 奪い尽くしたくて。 もっと奥へと際限なく求め続けても、この身体なら受け止めてくれるだろうか? 「それも正常値か?」 「……や、これは勃ってンな。ちょいオマエで妄想した」 そンくらい許せと苦笑した。 そのまま浴室のドアをくぐろうとしたの、止められた。 「待ってろ」 は? と訝しむ自分を無視したまま、士郎は備えつけの棚からビニール袋を取り出した。 そこに三角巾で吊った左手を入れて、器用に口を結んでいく。 思わず笑ってしまった。 克己と長く共にいたせいか、元からの性格なのか。 あれだけ嫌がっていた相手に対してこの面倒見のよさは、度を越していた。 基本的に困っている相手を前に、見て見ぬフリはできない性格なのだろう。 「……何を笑ってる?」 「や、世話されンのも、たまには悪くねェなって思ってた」 普段はわりと、世話してやる側に回ることが多い。 突っ走った挙句、後処理を周りに任せることはあっても、甘えかかってくるのはいつも周りの方で、自分が仲間に甘えることは滅多にない。 今まで追い詰めて泣かせたいとばかり思っていたのに、毒気を抜かれてしまう。 「……ったく、オマエの母ちゃん振り、ハンパねェな」 「何だ、それは?」 「……無自覚かよ。ますますタチ悪ィ」 「何か言ったか?」 先にバスルームに入り込んだ士郎が、シャワーの湯の温度を調整しながら、聞いてくる。 「……何でもねェ」 一筋縄ではいかない相手に、不意に笑いがこみ上げてきた。 うながされ、シャワー椅子に座る。 この後の展開を脳内でシュミレーションしながら、迫ってくるシャワーの湯に目を閉じた。

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