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宿り木の下でKissをしようよ2

車から降りて荷物を取り出すと、祥悟はさっと袋のひとつを奪い取り、玄関ではなく庭の方に歩いて行く。 「どこ行くんだい?そっちは…」 「んー。ちょっと確かめんの」 智也は後を追いながら首を傾げた。 祖父の家の庭は、こんなド田舎だけあって、かなりの広さだ。祥悟はこの庭も気に入っていて、ここに来た時は必ず縁側で庭を眺めてぼんやり過ごす。 縁側で日向ぼっこなんて、華やかな世界にいた彼にはちょっとそぐわない気もするが、本人は意外と馴染んでいるらしい。 「確かめるって、いったい何を?」 庭の真ん中に立ち、何故か空を見上げている祥悟に尋ねてみる。彼はくるりと振り返ると 「や。なんでもねーし」 またさっさと今度は玄関に向かって歩き出した。 ……気紛れだな。 智也は苦笑すると、後を追って自分も玄関に向かった。 「うーん。失敗したな。ストーブが壊れてるみたいだ」 ここに来る途中、定期的な手入れと点検を頼んでいる管理人に連絡をして、灯油は用意してもらったが、肝心のストーブが何度やってみても点火しない。 「なあ、あっちの年代物のヒーターは大丈夫なんだろ?」 祥悟はちょっと寒そうに、ポケットに手を突っ込んだまま、顎で窓際の方を示した。智也は古ぼけた電気ヒーターを見て眉をしかめ 「でも…あれだけじゃ寒いよ。今日は雪が降りそうな寒さだ」 「寒けりゃくっついてればいいじゃん。毛布持ってきてさ」 「え……」 「それより、飯あっためて食おうぜ。俺もう腹がぺこぺこだし」 食事を終えると紅茶をいれて居間の方に移動した。2人並んでソファーに腰をおろす。 やはり電気ヒーターだけでは少し寒かった。智也が用意していたブランケットを祥悟の膝に掛けてやると、祥悟は紅茶をひと口啜り、満足そうに笑って 「おまえってさ、俺の好み、ほんとよく知ってるよな」 感心したように言われて、智也は微笑んだ。 「そうかい。口に合ったようで何よりだよ。来年は前日フリーにして、君の好きなものをいろいろ作ろうかな」 祥悟は紅茶のカップをテーブルに置くと、こてんっと肩に寄りかかってくる。 静かな夜だ。 華やかな演出も煌びやかな電飾に彩られたツリーもないクリスマスイブになったが、心は満たされていた。 隣に愛する人の温もりがある。 それだけで幸せだ。

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