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宿り木の下でKissをしようよ3

「祥。寒くないかい?」 あまりにも静かで、もしかしたら眠ってしまったかと、智也は傍らの祥悟にそっと声をかけた。祥悟は肩に頭をすりすりと擦りつけてきて 「んー。こうしてっとあったかいし。……なあ…智也。俺がおまえと寝るようになってさ」 「え?」 「んー…まあ、その、セフレ?ってやつ。そういう関係になってさ」 「うん」 急に何を言い出すのだろうと、ちょっとドキドキする。 「それから今日まで、クリスマスイブって一緒にいたことなかったじゃん?」 「……ああ。そうだったね」 祥悟はもう冷めてしまった紅茶のカップを、両手で包み込むように持って 「5年ぐらい前のイブにさ、俺、おまえに今夜空いてる?って電話したよな?」 覚えている。 クリスマスイブなのに、珍しく祥悟から電話があったのだ。あの頃、祥悟には雑誌で堂々と恋人宣言をした相手がいて、智也としては精神的にドン底の日々だった。 「…うん。珍しく君の方から電話をくれたよね」 「でもおまえ、予定あるって断ったよな?あん時さ、もしかして…恋人、いたわけ?」 恋人がいたのは、自分じゃない。君の方だ。 「いや。いないよ。俺は君とそういう関係になってから、誰かと付き合ったこと、なかったから」 祥悟が首を傾げて、じっとこちらの顔を覗き込んでくる。智也は引き攣りそうになるのを必死で堪えて、ポーカーフェイスを装った。 「んじゃ、なんであん時、断ったのさ」 「それは……ケジメかな…って思ってた。君と俺は恋人じゃなかったからね。聖夜はやっぱり、恋人たちの日…って思ってたんだ。君はその日たまたまフリーだったけど、付き合っていた女性がいただろう?」 あの頃の気持ちを思い出して、心の奥がチリチリと痛む。祥悟はどうして今更、こんな話を持ち出してくるのだろう。 折角の2人きりのイブなのに。 「おまえってやっぱロマンティストだよな。でもさ、恋人なんて俺、いなかったし?」 智也は驚いて、彼の顔を見つめ返した。 「え……だって……あの時、君はたしか眞深さんと…」 「あいつは恋人じゃねーもん」 「でも、雑誌で…」 「セフレでもなかったぜ。ただの友達だし」 「じゃあ……どうして……事務所も公認だって、あの当時騒がれていたよね」 「変なのにつきまとわれてたんだよ、眞深のやつ。だから俺が恋人宣言してやっただけ。それ、橘のおっさんも知ってたし?」 ……俺は、知らなかった。そんなこと。だったら… 「……そう……だったのか……。2年ぐらい続いてたから、俺はてっきり…」 「俺、おまえと寝てからさ、誰とも寝てねえとは言わないけど…決まった相手作るの、嫌だったんだよね」 「え……」

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