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宿り木の下でKissをしようよ4
智也が思わず身を乗り出すと、祥悟はちょっと焦ったように身を引いて
「や。おまえのこと、好きとか、恋人にとか、そういう感じじゃなかったけどさ。なんつーか…誰といても前ほど楽しくねえって感じ?よくわかんないけどな」
「祥……」
祥悟はちろっと横目でこちらを見て、ぷいっと目を逸らした。
「だからあん時、おまえに電話かけたのってさ、クリスマスイブだったから…おまえと一緒にいたかったんだよね。他の誰かじゃなくてさ」
……信じられないことを、祥悟が言っている気がする。そんなはず、ない。そんなはずは。
「………」
「ケーキ買ってさ、おまえにプレゼントとか買ったりしてさ、いちおうな。で、電話かけたらおまえ、部屋に誰かいる感じだったし?」
あの時、たしかに部屋に人はいた。でもあれは、うちの長兄とその家族だ。クリスマスイブのイベント帰りに近くまで来たからと、立ち寄っただけだった。
「……祥、あれは」
「あ、女いるのか、当たり前だよな、おまえ、イケメンだし優しいしさ。そう思ったけどさ、なんかすっげームカついてた」
祥悟はカップをテーブルに置いて、傍らのクッションを掴んだ。その時のことを思い出したのか、抱きかかえたクッションをぎゅーっと押しつぶす。
「ねえ、祥、違うよ、あれは」
「あん時、俺、無性に寂しくてさ。そばにおまえ、いて欲しかったんだよね。電話じゃなくってさ、直接押しかければよかったよな」
「祥…」
「俺がおまえんとこ押しかけてたらさ、もうちょっと早く俺らって…付き合ってたのかな?って思っちまったの」
祥悟の声に、悔しそうな色が滲む。
本気で言っているのだ。
でも、信じられない。
「でも君は、あの頃、…里沙さんのことが…好きだったよね」
思わず言ってしまってから後悔した。言わずもがななことだ。
「…ごめん」
祥悟は目を伏せて、首を横に振ると
「そうなんだけどさ。でも、おまえを里沙の代わりにする気はなかった。俺は、おまえだから一緒にいたかったんだし。……なんてさ、今更だよな」
祥悟がそう言って首を竦める。
言うべき言葉が見つからなかった。
混乱していた。
彼が言っていることが、上手く理解出来ない。
「……」
黙り込んでしまった自分を、祥悟が探るような目で見ている。何か、言わなくては。でも、どうしても言葉が見つからないのだ。
「俺にもさ、よくわかんねえの。あん時の自分の気持ちって。ま、そんなこともあったなーって、イブだから思い出しちまったわけ」
そんなに前に、祥悟は自分を求めてくれていたのか。
知らなかった。
全然わからなかった。
自分といる時の祥悟に、そんな様子は少しもなかったから。
智也は、無表情を装うことも出来ずに、ただただ祥悟の顔を見つめていた。
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