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宿り木の下でKissをしようよ7(最終話)
智也は祥悟の額に優しく口付けると、いったん手を離して立ち上がった。
持ってきた荷物の中に忍ばせていた物を取り出して、ソファーに戻る。
「…っ、これ」
差し出した箱を見て、祥悟が目を見開いた。
「うん。いつか君と一緒にイブを過ごせるようになれたら、渡したいってずっと思っていた」
祥悟は箱を受け取ると、リボンを解き、蓋を開ける。箱の中身は薬指用のペアリング。選んだデザインはシンプルで、さっきのリングとどこか似ている。
「そっか……。じゃあ俺らってさ、ずっと両想いだったんだな。どっちも気づかなかっただけでさ」
祥悟はリングを指先で摘み上げ、ため息のように小さく呟いた。
「はめてみようか?さっきのと、これと」
智也がそう言って、祥悟の手を取ろうとすると
「あ、ちょっと待って」
「え。なに?」
「庭、出てみていい?」
「え。いいけど……どうして?」
「いいから、来いって」
祥悟は箱を持ったまま立ち上がり、何か思いついたらしく楽しげに腕を掴んで引っ張ってくる。智也は微笑んで立ち上がった。
「あの、欅の木」
祥悟が指差すのは、庭のど真ん中にある一番大きな木だった。
「うん」
「あそこに、他と違って葉っぱが青々してるとこ、あるじゃん?」
智也は月明かりを頼りに、目を凝らしてみた。
たしかに、冬枯れのその木に何ヶ所かだけ、まるで季節を間違えたような緑色の葉の塊がある。
「ああ、あれかい?」
「あれってさ、宿り木っていうんだってさ。前に峰さんが教えてくれたんだ」
「宿り木…」
「あの下でキスすると、幸せな恋人同士になれるんだってさ」
祥悟の顔を見ると、ちょっとはしゃいだような笑顔で、自分を見上げている。
やっぱり君に、哀しい顔は似合わない。
いつだってそうやって、輝くように笑っていて欲しい。
「祥…」
「な。この指輪、お互いにはめ合ってさ。あの宿り木の下で、キスしようよ。な?」
ーEndー
※25日中に完結させようと、ちょっと大急ぎの更新でした*_ _)
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