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『Kissの意味』1
シャワーを浴びて浴室を出ると、智也がにこにこしながら、バスタオルを広げて待ち構えていた。
「……。おまえ、何やってんの?」
「おいで。拭いてあげる」
祥悟はじと……っと智也を睨みつけてから、大人しく歩み寄った。智也は幸せそうな顔をしながら、祥悟の身体をバスタオルで包むと、丁寧に身体の水気を拭き始める。
頭のてっぺんから足の先まで、丁寧に丁寧に拭われていく。
「なあ、まだかよ」
裸のままずっと黙って突っ立っているのに飽きて、祥悟が文句を言うと、智也はようやく満足そうに微笑んで立ち上がり
「うん。もういいよ」
そう言って、棚からガウンを取ろうとする祥悟の手をぐいっと握った。
「は? おまえ、何やって……」
素っ裸のまま、手をぐいぐい引かれて脱衣所を出る。
ここは智也の部屋だし、今更、見られて恥ずかしい身体じゃないけれど、小さなガキじゃあるまいし、バスタオルも巻かずに歩くってのは……。
「いいから、来て」
いつになく強引な智也に、祥悟は内心ため息をついて抵抗を諦めた。
智也は基本、祥悟が本気で嫌がることはしない。すごく強引なわけでもない。ただ、独特のこだわりというか、フェチみたいなものがあって、1度何かを思いつくと、実践してみたくて堪らなくなるらしい。
……まあ、俺も気持ちいいのは嫌いじゃないし? 智也が新しく仕入れてきたことって、結構面白いの多いから、いいんだけどさ。
智也は、いそいそと祥悟をソファーに連れて行くと、バスタオルを敷いた上に座らせた。
「ちょっと、待ってて」
今度はダイニングの方に何かを取りに行ってしまった。
……嬉しそうな顔、してんな。つか、俺、裸のまんまかよ。
智也の姿を目で追いながら、祥悟は苦笑した。
「は? なんでスマホ?」
何か新しいオモチャでも手に入れたのかと思いきや、智也が嬉しそうに持ってきたのはスマホで……。
「あ。写真は撮んねえぞ。前にも言ったじゃん」
眉間に皺を寄せる祥悟に、智也は慌てて首を振り
「違う違う。これだよ」
そう言いながら見せてくれたのは……
「……Twitterじゃん。おまえ、んなのやってんのかよ?」
祥悟の呆れ声に智也は首を竦め
「情報収集の為だよ。俺、小説書いてるだろう。こういうのもいろいろと社会勉強になるんだよね」
祥悟は眉を顰めたまま鼻を鳴らし
「……で? それ、見んのになんで俺、裸だよ? おまえアホか。ガウン取ってくる」
※作中に出てくるKissの意味は
http://fumu2.net/where-kiss-meaning-1244
を参考にさせて頂いてます(*´ー`*)
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