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『Kissの意味』3
「髪の毛は思慕……額は祝福……頬は親愛……なるほどね。この辺りへのキスは、なんだか可愛い感じだ。性的なものっていうより、母親が子どもを可愛がってるような感じかな」
智也は独り納得しながら、髪や額や頬に、そっと触れるだけのキスを何度も繰り返す。ひどく愛おしげに。
祥悟は擽ったいのを我慢しながら、智也のすることに身を任せていた。
……はぁ……。なんか、ほっとするよな。こいつに大切にされてっとさ。
「耳は誘惑。喉は欲求か」
やがて、智也の声のトーンがぐっと落ちた。低く落ち着いた艶のある声で耳元に囁かれて、ぞわっとする。
耳元に息を吹きかけられ、耳朶を甘噛みされると、覚えのある甘い痺れが背中から腰に走り抜けた。
「……っん」
びくんっとして小さな声が漏れた。
「ふふ……感じた?」
含み笑いの智也の囁き。
「そこ、やめ……ろって。擽ったいし」
「うそ。君、ちょっと感じてきてるよね?」
智也はちょっと意地悪な顔をして、また耳朶をはみはみしてくる。
たしかにこれは、擽ったいんじゃない。その証拠に祥悟の下腹は少し反応していた。
……そこ、弱いんだっての。くそっ、前言撤回。こいつ、やっぱ全然可愛くねえし。
智也の舌が、耳朶から首筋につーっと滑り落ちていく。
「ここは……執着。ふーん……面白いな。首筋と喉だと意味が違うよ。喉は……欲求だね」
ちり……っと首筋に微かな痛みが走る。更に喉に智也がちゅっと吸いついた。
どさくさに紛れて、智也がキスマークをつけているのだと気づいた。祥悟がモデルだった頃には、絶対につけることを許さなかった所有の証だ。
「……っも、やめろってば」
ぞくぞくと走る甘い痺れに、祥悟は堪らなくなってきた。喉から胸の方へ降りていく智也の頭を、ぐいっと押しのける。
「……っ。あ……ごめん。嫌だった?」
すっかり夢中になっていた智也が、はっとしたように見つめてくる。眉をさげたその顔がひどく哀しげに見えた。
……んな顔すんなってば。
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