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『Kissの意味』4

「ばーか。嫌とか、言ってねえじゃん」 しゅんっと耳を垂れてしまったような、智也の情けない顔が嫌で、祥悟は口を尖らせた。 「でも……」 「あのな、突っ立ったまんまじゃ、落ち着かねえの」 祥悟は智也の言葉を遮ると、腕を掴んでソファーにどさっと腰をおろす。まだ祥悟の様子を窺っているような智也に、にやっと笑いかけて 「続き。次はどこさ?」 智也のスマホを取り上げると、画面を覗き込み 「胸は……ふーん、所有かよ」 智也はほっとしたような顔をして、祥悟の上にかがみ込むと 「あ……じゃあ、続きだよ」 そう言って、祥悟の胸に顔を埋めた。 ちゅっちゅっと智也が胸の尖りを吸い上げる度に、じわっじわっと甘いむずむずが沸き起こる。祥悟は込み上げてくる声を押し殺しながら、目を瞑って感覚だけに集中した。 思えば、この男と初めてこんな行為をしたのは、10代の半ば頃だった。智也が自分にしてくれることは、どれも気持ち良くて、性的なものに好奇心旺盛だったあの頃、実は智也の部屋に来るのが楽しみだった。 ……つーか。俺あん時16じゃん。今なら犯罪じゃねーの?あれってさ。 智也に思わぬ醜態を晒してボロ泣きした挙句、「俺だけのものになってよ」と言わせてから、ひと月が過ぎた。 自分のマンションはそのままだが、ほぼ毎日のようにこの部屋に入り浸っている。 いっそのこと、あのマンションは売り払って、ここに転がり込もうか……とも思うのだが、何となく踏ん切りがつかずにいた。 あの時、智也を他の誰にも渡したくないと痛切に思った。自分の中に、この男に対してあんな強烈な執着があったなんて、自分でも驚きだった。 自分の我が儘から、優しい智也を解放してやりたかったのに、更に太い鎖を巻き付けてしまったような……気がする。 ……いいのかよ、智也。おまえは本当にそれでさ。 こうして一緒に過ごす時間が増えれば増えるほど、この男への愛着は強くなっていく。 自分の中に募っていくこの想いが……恋とか愛ってやつなんだろうか。 それは姉の里沙に抱いていた狂おしい執着と、似ているようで似ていない。

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