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『Kissの意味』9※
「どうしたの? 祥。顔が赤いけど」
……わかってるっ。いちいち言うなってば。
曲げた両脚を抱えるようにして縮こまる祥悟に、智也はちょっと不思議そうに首を傾げ
「お腹は……だめかい? じゃあ、次は……」
スマホの画面を覗き込むと
「うーん。脚っていうのはないのか。あ。脛だね」
頷いて祥悟の脛に唇を押し付けて
「ここの意味は服従か。今のシチュエーションにぴったりだ」
智也の細くて長い指が、つつーっと脚の骨のラインをなぞっていく。その感触がすごく気持ちいい。指の次には唇が、そして舌が、時折ちりっと所有の証を刻みながら、下まで丁寧に降りていく。
祥悟は擽ったさとは違う感覚に、声を堪えながら、足の先をもじもじと擦り合わせた。
やがて指が、足の甲に触れた。
「ここは……隷属だ」
智也が躊躇いもなく、足の甲に顔を埋める。熱い吐息と共に、ざらっとした舌の感触が降りてきて、祥悟はぴくんっと跳ねた。
なんだろう。普段人に触れられない場所だからなのか、自分でも驚くほど敏感で、すごく……ゾクゾクする。
「んっ……んなとこっ、舐めんなって、ばか」
「ふうん。ここ、意外と弱い? 可愛い声、出てるよね」
智也はもぞもぞと逃げようとする祥悟の足をぎゅっと掴んで、唇と舌を這わせた。
「……っ……っ……ぅ」
祥悟は漏れそうな甘い声を押し殺しながら、足をもじもじと動かす。こんな所が感じるなんて、自分でも意外過ぎた。
「そしてここは……崇拝」
智也の唇が足の爪先に触れる。
「っ。ばっか。やめろっ。汚いっての」
思わず動いた足が、智也の頬を蹴った。
「あっ……ごめっ」
焦る祥悟に、智也はにこっと笑んで
「大丈夫。痛くないよ」
「……っ足、キスやめろよ。汚い、だろ」
「綺麗だよ。さっきお風呂入ったばかりだろう?それに、君の身体で汚い所なんて、ないよ」
少し熱を孕んだ智也の目に見つめられて、目を逸らせない。なんだろう。身体が異常に熱くなってくる。
「……俺のこと……好きかよ?」
無意識に言葉が零れていた。智也は目を細めて
「ああ。大好きだ」
すぐに与えられる確かな答えに、ほっとしている自分がいる。
……こんなにも、自分は、求められたいと願ってたんだろうか。自分だけをどこまでも肯定してくれる存在に……飢えてた?
ちゅっちゅっと爪先に愛おしげにキスを繰り返す智也に、祥悟は堪らなくなってきて、両手を伸ばした。
「なぁ……来いよ」
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