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『Kissの意味』26※最終話
駆け上がっていく悦楽の極みに、気が遠くなりかけた瞬間、智也の灼熱が、奥で一気にふくらんだ。
「~~~っっ」
「っっくぅ」
中で放出された智也の熱に、更に押し上げられるようにして、自分の熱も弾け飛ぶ。
祥悟は仰け反り、声にならない悲鳴をあげた。後ろにしなり、そのまま倒れていきそうになる身体を、智也がしがみつく様に両腕で抱き留める。
どこもかしかもピッタリと密着したふたつの肉体が、互いの熱と鼓動と汗を、混じり合わせていくような錯覚。
呻きながらびくびくと腰を震わせ、断続的に自分の中を濡らしていく、その智也の欲情の証が嬉しくて幸せ過ぎて、大声で泣き叫びたくなる。
祥悟は、愛おしい獣の頭を、ぎゅーっと抱き締めた。
はぁはぁと肩で息をしながら、しばらく満たされて抱き合っていた。恍惚感がなかなか去らず、ドクドクと脈打つ鼓動の音だけが聴こえている。
噴き出した汗が冷えて互いの熱を下げるまで、ただ黙って抱きしめ合った。
祥悟の涙腺は崩壊してしまったらしく、はらはらと涙が溢れて落ちて、いつまでも頬を濡らしていた。
「祥……」
掠れた智也の声が胸元で響く。祥悟は名残惜しさを感じながら、智也の頭を抱き締めていた腕の力をゆるめた。
智也の頭がもぞっと動いて、自分を見上げる。涙腺が崩壊していたのは、自分だけじゃなかった。真っ赤に濡れた智也の瞳が、自分に対する深い愛情を伝えてくる。
祥悟は優しく微笑んで、汗で乱れ張り付いた智也の額の髪を、そっと掻き分けた。
「……天国……行っちゃったよな? 俺ら」
笑いながら泣き声で囁く祥悟の言葉に、智也は一瞬目を見張り、くしゃっと顔を歪めた。
「ああ……そうだね……祥……祥……」
「ん~? なんだよ、智也」
祥悟はそろそろと、智也の顔に自分の顔を寄せた。
「なに? 言って、智也」
「……っ。愛してる。君を。初めて会った時からずっと……俺は君の……虜だった」
祥悟はふわっと花のように笑って
「俺も……たぶん、ずっと……おまえのこと、愛してたみたいだ。気づかなくて、ごめんな」
祥悟の目からぽろんと零れ落ちた涙が、智也の頬を濡らす。
「なあ、キスして? 唇へのキスは……愛情、だよな?」
「Kissの意味」ー完ー
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