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智也&祥悟BirthdaySS「君と僕の生まれた日」1
ーピンポーンー
そろそろ寝室に向かおうかとソファーから腰を浮かしかけた瞬間、唐突に響いた玄関ベルの音。
……こんな時間に……誰だろう?
智也は首を傾げながらリビングを出て、玄関に向かった。
ドアスコープを覗いてみるが、誰もいない。
……悪戯……かな。
そのまま踵を返しかけると、今度はドアの低い位置をガンガンと叩く音が響く。
……え……?
智也は若干警戒しながら、チェーンはかけたままでドアの鍵を外した。
祥悟との共演CMのおかげで女性ファンが増えて、妙な追っかけがマンションまで訪ねてくるようになっていた。どうやってここを特定したのかは分からないが、先日も酔っ払った年上の女性が訪ねてきて中に入れろと揉み合いになり、追い返すのにひと苦労だったのだ。
その話を祥悟に愚痴ったら「おまえのマンション、セキュリティ甘いし。いいとこ知ってるから引っ越せば?」と言われて、実は本気で悩んでいた。
……ここ、古いし狭いしな。……祥がたまに泊まってくれるなら、もっと近場のセキュリティがいい所に越してもいいかも。
つらつら考えながら、そーっとドアを開けてみるが、やたらと重たくてなかなか開かない。
……うわ。酔っ払いがドアの前で寝ちゃってる?
しゃがみ込みながら僅かに開いた隙間から外を見てみると、床にだらしなく伸びた脚と見覚えのある革靴が目に入った。
……え……祥……?
今夜は、3年続けて担当しているブランドの何周年だかのプレミアムパーティに出席だと、祥悟は言っていた。「泊まりだしかったるいけどさ、オツキアイで出ないとダメなやつな」そう言って苦笑していたのだ。
「祥?」
もう夜中だから、声をひそめて呼びかけてみる。
床に投げ出した長い脚が動いで、んー…っと小さく呻き声が聴こえた。
「祥なの?ね、そこどけて?ドアが開かないから」
ちょっと声を大きくすると、またんーっと呻き声がして、ズルズルとドアを擦る音とドサッという音がした。
隙間からは、脚の代わりに髪の乱れた祥悟の後頭部が見える。
「祥っ」
智也は慌てて身を起こし、ドアを開いた。
床にぐったり寝そべっているのは、やはり祥悟だ。
「祥?どうしたの!?」
腕を掴んで引き起こすと、祥悟はとろんとした目でこちらを見上げてくる。
顔が赤い。酔っているのだ。
パーティ会場のホテルに泊まりだと言っていたのに、抜け出してきたのだろうか。
「祥、酔ってるの?」
「んー……あ…っつい……」
コートも着ていないそんな薄着で、暑いわけがない。今日は珍しく雪がチラついているのだ。
智也は酒臭い祥悟の身体をお姫様抱っこで持ち上げると、苦労しながらドアを開けて中に連れ込んだ。
……まったく……。お酒、弱いくせに飲んだのか。
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