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智也&祥悟BirthdaySS「君と僕の生まれた日」2
祥悟はくったりと脱力していて、いくら細身とはいえ、リビングまで連れて行くのはひと苦労だった。
「もう……どうしてそんなに飲むの」
ソファーに祥悟の身体をおろし、智也は大きくため息をついた。水を持ってこようと立ち上がりかけた腕を、祥悟にぎゅーっと掴まれる。
「と、も、や。暑い…っ」
妙に掠れた声で、訴えてくる。
「うん。今、水を…」
「無理……あっつい…」
祥悟はタイが外れたシャツの首元を、手で掻きむしった。むずかるように身体を揺らすから、古いソファーがギシギシいっている。
「こら。そんな乱暴に外したら傷つけてしまうよ」
智也は空いている方の手で祥悟の手をグイッと掴みあげた。
祥悟ははぁっと荒い息を吐き出し、潤んだ目で睨んでくる。
その表情に違和感を覚えた。
酔っているだけだろうか?
なんだかちょっと…
「な。なあ、」
掴んだ腕をグイグイ引っ張ってくる。
「……どうしたの?苦しいの?」
祥悟は目にうっすらと涙を浮かべ、必死に首を縦に振った。
やっぱり変だ。
智也は床に膝をつくと、祥悟の顔を覗き込んだ。
はぁはぁと吐く息がやけに荒い。
急性アルコール中毒だろうか?
智也はドレスシャツの首元を急いで寛げてやると
「待って。今、救急車を」
「違う……薬、盛られた……」
「え?」
「クライアントの、くそじじい。……変な薬、酒に仕込んで」
「ええっ?」
智也は息を飲み、祥悟の両頬を手で包んだ。
「薬って、どんな?」
「わ…っかんね、身体、変。熱くて…ヤバい」
呻くように囁きながら、祥悟は自分の下腹に手を伸ばすと、スラックスのホックを外しチャックをおろして
「ここ、熱い……も、死ぬ…っ」
下着の上から股間を掴んで、身悶えた。
……ええっ……?
今日の祥悟は、パーティー用に珍しく正装をしている。
生地の良さそうな白いシルクのドレスシャツとカマーバンド。スラックスと上着もかなり高級そうなブラックタキシードだ。
だが、タイは千切れかけ、シャツもクシャクシャで、羽織っただけの上着のボタンはむしり取ったようになくなっていた。
「ね。祥。そいつに、何、されたのっ?」
酒に薬。
祥悟の様子を見ていると、おそらくは媚薬的なものか、麻薬だろう。
パーティー会場で一服盛られた?
そんなはずはない。人目があり過ぎる。
2人きりになったのか?
もしかしたらホテルの部屋で?
誘われて、ついていったのか?
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