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智也&祥悟BirthdaySS「君と僕の生まれた日」6

「祥……」 射精と同時に、一気に現実に引き戻された。 ズルズルと座面に横になった祥悟は、目を虚ろに見開いている。 部屋は暖房が効いているが、今夜は寒いのだ。 このままでは風邪をひく。 「待ってて。何か掛けるものを」 「おまえ、ムカつく」 ぼそっと言葉を遮られた。直視出来ずに横目でちろっと彼を見ると、目が合った彼の眼差しは怒りに煌めいている。 後悔が押し寄せていた。 祥悟が怒るのは当然だ。 「……ごめん」 「簡単に謝んな。おまえ、何に対して謝ってんのさ?」 「っ、それは」 祥悟はのろのろと起き上がると、肌蹴たシャツ1枚で床に降りて立ち上がり 「シャワー、借りる」 ムスッとひと言吐き捨てて、床に散らばるスラックスと下着を拾い上げた。 祥悟は怒っている。こちらの予想以上に。 そのまま、横をすり抜けてドアに向かおうとする祥悟の腕を咄嗟に掴んだ。 「祥、待って。本当にごめん」 祥悟は冷ややかな目でこちらを睨むと 「だから。何に対しての謝罪なわけ?」 「それは…無理やり……抱いたから」 智也が自信なさげにそう言うと、祥悟は大きなため息をつき 「ほら。やっぱ分かってねーじゃん、おまえ。見当違いに謝られても困るんだけど?」 「だったら祥、君は何を」 祥悟は黙ってじっと睨んでいたが、やがて首を竦めて 「おまえが、俺の話きかないで、勝手に誤解したことだよ。手、離せよ。寒いからシャワー浴びてくる」 それ以上は話をしたくないというようにピシャリと言いきられて、智也は力なく手を離した。 祥悟はスタスタと部屋から出て行く。 「はぁぁぁぁ…」 大きなため息が零れ落ちる。 智也はガックリとソファーにへたりこんだ。 頭を抱えて項垂れる。 「話を聞かないで誤解?……どんな誤解だ?」 彼が訪ねてきてから交わした会話を、思い起こしてみる。祥悟は薬の影響で、まともに話が出来なかったはずだ。いったいどんなことを言っていた? 「薬盛られた。クライアントのじじいに」 この短い言葉の何を、自分は誤解したのか。 人の多いパーティー会場で、祥悟に怪しげな薬を飲ませるなんて不可能だ。だからきっと部屋で…… 「……あ」 智也ははっと顔をあげた。 薬を仕込まれたのは、会場なのかもしれない。 それは媚薬ではなくて何か別の、例えば睡眠薬のようなもの。 酔ったように正体をなくした祥悟を、その男が介抱するフリで部屋に強引に連れて行く。 ……ありえないことでは、ない。だとしたら。祥は自分の意思で男についていったわけじゃないのか。 頭を冷やして考えてみれば、そういう可能性もあると分かる。あの時はショックでつい頭がカーッとなって、勝手にそうだと決めつけてしまった。 智也は慌てて立ち上がり、浴室に向かった。

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