40 / 175

智也&祥悟BirthdaySS「君と僕の生まれた日」7

ドアを開けると、祥悟は既にシャワーを浴び終えて脱衣場にいた。下着とスラックスをはいて、タオルで髪の毛をゴシゴシ拭いている。 「祥……」 そっと声をかけると、顔をあげて振り返り 「な。おまえのシャツ、どれか貸してくんねえ?着古しでいいからさ」 「あ…ああ。それならそこの棚に」 「サンキュ」 祥悟は棚を開けて、洗い換え用の綿シャツを1枚出すと、素肌に羽織った。 「祥。あのね。話をしてもいいかい?」 「俺は話すことないし?もう帰るしさ」 「ええっ?今から?どうやって」 「表通り出て、流しのタクシー拾う」 「いや。無理だよ。君、コートも着てないだろう?今夜は特別寒いんだ。風邪をひくよ」 必死に引き止めると、祥悟はなんだか呆れ顔になり 「おまえさ、さっきと別人だよな」 呟いて苦笑した。その表情は、さっきより穏やかで怒りのオーラは感じない。 「ごめん。すまなかった。君の話をキチンと聞かずに、俺は」 祥悟は首を竦めて 「リビング行こうぜ。ここじゃ寒いし?」 「で。俺がなんで怒ってんのか、分かったわけ?」 3人掛けのソファーは盛大に汚してしまったから、タオルケットを持ってきて覆い、その上から2人並んで腰をおろした。 「うん。たぶん」 「まあ夜中に押しかけてきて世話焼かせてんの、こっちだけどな」 祥悟はそう言って、悪戯そうに首を竦めた。 薬はほとんど抜けてしまったのか、多少ふらつきはするが顔色も通常に戻っている。 「そのクライアントの男、君を強引に連れ込んだんだね?部屋に」 「そ。前からさ、ちょいちょい誘われてたんだよね。でもあんな腹の出たじじいとさ、オツキアイでもえっちする気ねーし?」 「薬はお酒に?」 「ん。シャンパンの中になんか痺れるやつをな。やべえって思った時は遅かったし。ちぇ。油断してた」 祥悟はこちらの肩にこてんと頭を預けて 「痺れはすぐに消えてったんだよね。だけど媚薬みたいなの、酒と一緒に飲まされてさ。身体、燃えるかと思ったし」 智也は祥悟の肩を抱き寄せ、そっとさすった。 「そうか……辛かったね。ごめん。まず君の話をよく聞くべきだった」 「おまえさ、もしかして…嫉妬とかしちゃったわけ?」 ちろっと横目でこちらを見てくる祥悟から、智也は慌てて視線を逸らした。 ずばり言い当てられて、ますます落ち込んだ。 そんな感情は抑えなければ、セフレではいられないのに。

ともだちにシェアしよう!