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智也&祥悟BirthdaySS「君と僕の生まれた日」7
ドアを開けると、祥悟は既にシャワーを浴び終えて脱衣場にいた。下着とスラックスをはいて、タオルで髪の毛をゴシゴシ拭いている。
「祥……」
そっと声をかけると、顔をあげて振り返り
「な。おまえのシャツ、どれか貸してくんねえ?着古しでいいからさ」
「あ…ああ。それならそこの棚に」
「サンキュ」
祥悟は棚を開けて、洗い換え用の綿シャツを1枚出すと、素肌に羽織った。
「祥。あのね。話をしてもいいかい?」
「俺は話すことないし?もう帰るしさ」
「ええっ?今から?どうやって」
「表通り出て、流しのタクシー拾う」
「いや。無理だよ。君、コートも着てないだろう?今夜は特別寒いんだ。風邪をひくよ」
必死に引き止めると、祥悟はなんだか呆れ顔になり
「おまえさ、さっきと別人だよな」
呟いて苦笑した。その表情は、さっきより穏やかで怒りのオーラは感じない。
「ごめん。すまなかった。君の話をキチンと聞かずに、俺は」
祥悟は首を竦めて
「リビング行こうぜ。ここじゃ寒いし?」
「で。俺がなんで怒ってんのか、分かったわけ?」
3人掛けのソファーは盛大に汚してしまったから、タオルケットを持ってきて覆い、その上から2人並んで腰をおろした。
「うん。たぶん」
「まあ夜中に押しかけてきて世話焼かせてんの、こっちだけどな」
祥悟はそう言って、悪戯そうに首を竦めた。
薬はほとんど抜けてしまったのか、多少ふらつきはするが顔色も通常に戻っている。
「そのクライアントの男、君を強引に連れ込んだんだね?部屋に」
「そ。前からさ、ちょいちょい誘われてたんだよね。でもあんな腹の出たじじいとさ、オツキアイでもえっちする気ねーし?」
「薬はお酒に?」
「ん。シャンパンの中になんか痺れるやつをな。やべえって思った時は遅かったし。ちぇ。油断してた」
祥悟はこちらの肩にこてんと頭を預けて
「痺れはすぐに消えてったんだよね。だけど媚薬みたいなの、酒と一緒に飲まされてさ。身体、燃えるかと思ったし」
智也は祥悟の肩を抱き寄せ、そっとさすった。
「そうか……辛かったね。ごめん。まず君の話をよく聞くべきだった」
「おまえさ、もしかして…嫉妬とかしちゃったわけ?」
ちろっと横目でこちらを見てくる祥悟から、智也は慌てて視線を逸らした。
ずばり言い当てられて、ますます落ち込んだ。
そんな感情は抑えなければ、セフレではいられないのに。
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