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バレンタインデー特別番外編「幸せな誤算」1
※バレンタインデー用に書いたお話。
CPは「TENSIのいる情景」智也×祥悟と
「つきのかけら」暁×雅紀。
※※※※※※※※※※※※※※
「わ。わーーーっ」
郵便物を取りに行った雅紀が、嬉しそうな声をあげてすっ飛んできた。厨房で新しいケーキの試作品を作っていた暁は、思わずふふっとふきだした。
……まーた何か珍しいもんとか、見つけちゃったのか~?うちの仔猫ちゃんは。
雅紀と暮らすようになってから、こんなことはしょっちゅうだ。
あの感受性豊かな感激屋の恋人は、毎日のようにああして何か発見しては、嬉しそうに報告してくれる。
それは、面白い雲が見えたとか、空気が澄んでいて星空が綺麗だとか、日々の暮らしの中のほんのささやかな発見だったりするのだが、目を輝かせて教えてくれる雅紀が、素直で可愛くて心が和む。あいつと一緒に過ごしていると、毎日が身近にある小さな幸せで満たされていく。
「ね、ね、暁さんっ」
「ん~?どーした?」
暁は、グラハムクラッカーを砕いて溶かしバターと混ぜた土台を型に敷き詰めてから、手を拭いて厨房から出た。
雅紀はほんのり頬を染めて、思わせぶりに両手を後ろに隠している。その表情はちょっと得意気で、すごく楽しそうだ。
……く~。なんだよ、その顔。めちゃくちゃ可愛いぜっ。
思わず抱き寄せてキスの嵐を降らせたいのをぐっと堪えて、暁は不思議そうに首を傾げてみせた。
「また何か見つけたのか?あ、当ててみようか?花だろう、初めて見る花。違うか?」
雅紀は鼻をひくひくさせて、首を横に振った。
「違います。もっと凄いもの」
「もっと凄い?んじゃ、虫だな。新種の昆虫発見だろ?」
雅紀はつーんと澄ましながら首を横に振り
「違いますー。もっと、いいもの」
暁は笑いだして両手を掲げ
「降参だ。全然わかんねえよ。教えてくれ」
途端に雅紀は幸せそうにふにゃんと微笑んで
「ふふ。当たっちゃったんです!」
「当たった?何がだよ」
雅紀は後ろに隠し持っていた郵便物を、そろそろと前に差し出すと
「これ。前に言ってたネットの懸賞の」
暁は驚いて目を見張った。
「は?それってもしかしてバレンタインデーのやつか?」
雅紀はこくこく頷くと
「そう、それです!ペアで2組だけの特賞が当たったんです!」
「まじか……」
暁は雅紀の差し出す封書を受け取り、中を確認してみた。
プレミアムディナー付き宿泊御招待券という文字が飛び込んでくる。
以前2人で、ネットのバレンタインデーの限定デザートを検索していた時に、超高級ホテルのイベントの懸賞を見つけたのだ。特賞ペアで2組様なんて、こんなもん当たるわけないよなーっと、半ば冗談半分で応募した。
それが奇跡的に当選したらしい。
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