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バレンタインデー特別番外編「幸せな誤算」25
「や、祥悟さん、待って。話だけって約束ですよね。触るのはナシだからっ」
個室に入ると、祥悟は早速、雅紀をソファーに座らせて隣に身をぴったり寄せて腰をおろした。
「いいじゃん。ちょっとぐらい。減るもんじゃなし」
言いながら、雅紀が必死に手で押さえているスカートを、再びペロンっと捲りあげる。
「ふーん。雅紀の脚って俺より細いよね。あ、このガーターベルト、レースとフリルがついてるのか。可愛いね」
「み、見ちゃ、ダメです!」
「邪魔。手、どけてよ。うわぁ…雅紀くん、えっちだね。この下着……紐パンじゃん。しかも生地、うっす」
「っっ、さ、触んないで!」
祥悟は、ラメ入りの白いストッキングに包まれた雅紀の太腿を、手の平で優しく撫で回した。
雅紀は何とかスカートを戻そうともがきながら、脚をもじもじ擦り合わせている。
その眺めは、清楚なのに妙にエロティックだった。
「君もあの懸賞に応募して当たってたなんてさ、すごい偶然だよね」
「…っ。じゃあ、祥悟さんたちも…?」
「そ。君たちの隣のブースにいたよ。暁くんとはトイレで会ってる」
その言葉に、雅紀がピタッと動きを止めた。
「……トイレで…?……え……じゃあ、秋音さんが言ってた人って……」
抵抗がなくなったのを見て、祥悟は更に大胆になった。指先をじりじりと脚の付け根の方へ移動させていく。
「うん。暁くんに聞いてなかったんだ?俺と会ったこと」
「……聞いてないです。…っあ、あっ、だ、だめっ」
雅紀が不意に切羽詰まった声をあげる。祥悟はニヤリと頬をゆるめた。
女性用の布地の少ない下着に包まれた、雅紀のその場所。そこに指先がちょっと掠ったのだ。
「可愛い声出てる。ふふ。暁くんはどうして君に俺のこと言わなかったのかな?あ……そっか。言えなかったのかも?」
「え……?」
「彼、最初は女装だって気づいてなくて、俺の尻に見蕩れてたんだよねぇ。それに……ちょっとだけキスも」
祥悟は思わせぶりに言葉を途切らせると、指先をその場所で蠢かした。ぴくんぴくんっと雅紀の身体が小さく震える。
「や、やだ、ほんとにやめ、」
「雅紀って敏感だよね。暁くんにいっつもどんな風に抱かれてるの?乳首とか、感じちゃう方?」
際どい場所を指先でさわさわしながら、伸び上がって耳元に囁きかける。雅紀はこちらの腕をしがみつくように掴んで、いやいやをした。
「ねえ、せっかくだから聞かせてよ。君はエッチの時、どんな風に暁くんを誘惑するの?元々、君ってゲイなんだよね。俺よりすごいテク知ってそう」
雅紀は目に涙を滲ませて、ふるふると首を横に振った。
「俺さ、ゲイじゃないからちょっと不安なんだよね。ちゃんと智也、気持ちよくなってくれてるのかってさ」
ため息混じりの言葉に、雅紀は首を振るのをやめて、じっとこちらを見た。祥悟は苦笑いして
「今のは本音。智也に抱かれてるとさ、いつも不安なんだ。俺の身体であいつ、本当に気持ちいいのかな?ってさ。無理したり我慢したり、してないのかな?ってね」
「……祥悟さん……」
「雅紀は不安になったりしねえの?俺たちと逆だけど、暁くん、元はストレートでしょ」
雅紀はぱちぱちと瞬きすると
「不安に……なりますよ。俺なんか、いつもです。でも……祥悟さんが不安になるなんて、思ってなかったです」
「なるさ。俺だって不安に。だって俺、本気で失いたくねえって思ったの、たぶん智也だけだもん」
「祥悟さん……」
神妙な顔になってじっと自分を見つめる雅紀に、祥悟はぷいっと顔を背けた。
「里沙は別な。あれは恋とかっていうのとは違うし。俺、智也と付き合うことにしたの、実はちょっと後悔してるんだよね……」
「後悔!?え、うそ、どうして?」
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