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バレンタインデー特別番外編「幸せな誤算」38※

「ひもひ、いい?」 ……ああ。すっげ、気持ちいいぜ……。でもそのうるうるな瞳は、やめろっつーの。イッちまうから! 暁は何度目かの暴発の衝動を必死にやり過ごし、手を伸ばして雅紀の頭に触れた。 くるくるふんわりなウィッグはすごく似合ってて可愛い。 でも、雅紀の地毛を触りたい。 ウィッグを掴んでくいっくいっと引っ張りる。目を若干寄り目にして自分のペニスを真剣に見つめていた雅紀が、驚いたように顔をあげた。「どうしました?」とその愛らしい目が聞いてくる。 「っ、これ、取っちまって、いいか?…っ、おまえの、髪、撫でたい」 口いっぱいに頬張りながら、雅紀はこくこく頷いた。 「やっぱさ、おまえの、いつもの顔、見ながら、感じてえんだよ」 雅紀は一瞬目を見開き、ふわんと微笑むと、ペニスからそろそろと口を外した。 甘い拷問からようやく解放されて、暁はほっと吐息を漏らす。 「外すぜ?」 暁はウィッグを留めているピンを丁寧に取り去り、かぱっと脱がせた。 柔らかい猫っ毛に縁取られた、いつもの雅紀が現れる。 「んー。やっぱ、おまえは可愛いぜ」 暁が微笑むと、雅紀は中で押さえつけられていた地毛を慌てて手でかき回して 「可愛く、ないです。ぺたんって、なってるでしょ?」 「ばーか。可愛いよ。やっぱ見慣れてるいつものおまえの方が、何倍も可愛いな」 かがみ込んで、額にちゅっとキスを落とすと、雅紀は擽ったそうに目をきゅっと細めてから、照れたように笑った。 「また、ぺろぺろしても、いいですか?」 遠慮がちに聞いてくるその言い方が愛しくて、きゅんきゅんする。 「いいけど……出ちまうぜ?」 「イってください。気持ちよく、なって?」 暁が苦笑しながら頷くと、雅紀はまた小さな口を精一杯大きく開いて、ソコを口に含んだ。 自分の赤黒いペニスに、綺麗な顔がしゃぶりついている。一生懸命に頬をふくらませ、舌をちろちろ動かしているその姿を見ているだけで、また急速に熱があがった。 暁は眉をきゅっと寄せ、雅紀がくれる快感に身を委ね、意識を集中する。 ……ああ……気持ちいい……。くそっ、ダメだ、もう、イく……っ 上下に揺れる雅紀の頭に手を置いて、柔らかい髪の毛に指先を突っ込む。 解放を求めてせり上がってくる熱情に、内腿がぎゅっと引き攣れた。 「っく、雅紀、イくぜ……っ」 頭を押して口を外させようとしたが、雅紀は頑固に咥えたまま離さない。 諦めてうっと低く呻くと、暁は情欲の飛沫を雅紀の口の中に吐き出した。 「気持ち悪く、ねえか?」 洗面台に並んで、傍らの雅紀の顔を覗き込む。大丈夫だと言い張るのを、無理やり引っ張って洗面ルームに連れてきた。備え付けのコップに水を汲んで、うがいをしろと渡すと、雅紀は素直に受け取り口をゆすいだ。 「うん。大丈夫ですよ」 「ば…か。んなもん飲むなっつーの。吐き出せよ」 雅紀はふわりと微笑むと、 「暁さん、すごく、気持ちよさそうでした。俺の口でイってくれて」 「ああ……すっげよかったぜ」 「イく瞬間の暁さんの顔、男っぽくて、俺すごい好き……」 うっとりした目で言われて、愛おしさが込み上げた。 暁は屈んで雅紀の唇をちゅっと吸うと 「今度は俺の番だぜ、雅紀。おまえの感じてる顔、見せてくれるか?」 低く囁くと、雅紀は目元を染めてこくん…と頷いた。

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