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バレンタインデー特別番外編「幸せな誤算」50

ドアを開けるや否や、祥悟が隙間をこじ開けるようにして、中に入ってきた。 「おいっ」 「しー。うるさいよ、暁くん。智也、何してんのさ、早く」 促され、おずおずと顔を出した智也は、頬を引き攣らせている。 「何の用だよっ」 祥悟の姿を見た途端、雅紀は暁の後ろに身を隠した。それを庇うようにしながら、暁は祥悟を睨みつける。 「へえ。やっぱりまったく同じ内装ってわけじゃないんだね。あ、トイレや洗面ルームってこっち側なんだ」 祥悟は意に介さず、キョロキョロと周りを見回した。 「何の用だっつってんだろ!祥」 暁が重ねて怒鳴りつけると、祥悟はまるで初めてこちらの存在に気づいたような顔をして目を合わせてきた。楽しげににぃ~っと笑って、後ろに隠れている雅紀の方に視線を移し 「雅紀。暁くんとはもうえっちした?したよね?顔に書いてあるもんね」 祥悟の直球な質問に、雅紀はいっそう身を縮こまらせて、暁の腕をきゅっと掴む。 「祥悟、雅紀にちょっかい出すな!」 「も~。やだな、なにその反応。食われそうになってる草食動物じゃあるまいし?」 ……分かってんじゃん。その通りだっつの。おまえは危険な肉食動物だからっ。 「おまえな。無理やり乗り込んできてそんな言い草あるか。いいから用件を言えよ」 カッカしすぎてまたこいつのペースに振り回されるのはゴメンだ。暁は極力、声のトーンを落とした。 「うーん?用って別に?君たち何してるのかな~?って見物に来ただけだけど?」 祥悟は首を傾げて可愛らしく微笑んでみせると 「智也、来て」 後ろの智也を指でちょいちょいと呼んで、暁の脇をすり抜け部屋の中に入って行く。 「あ、おい、こら、そっちはダメだっ」 すり抜けざま、指先で揶揄うように髪をさらっと撫でられて、雅紀はまたぎゅっとしがみついてきた。 祥悟はずかずかとベッドのそばに近づくと、鼻をクンクンさせて 「ふーん?ね、暁くん、えっちしてた割りには、シーツ乱れてないよね?エロい匂いもしないけど?ひょっとして、これからここでえっちするつもりだった?」 「勝手に入んな!おい、シーツ触んなっ、つか余計なお世話だっつの!」 またついつい声を荒らげてしまった。暁はすぐ横に来て祥悟を見つめている智也を、じろっと睨みつけた。 「真名瀬さん、あんた、何やってんすか」 智也はこちらを見て首を竦め 「ごめんね、早瀬くん。俺も止めたんだけどね」 とほほ…と苦笑する智也に、暁はがっくりと肩を落とした。 祥悟は優雅に歩き回りながら、部屋のあちこちをチェックして 「ね、暁くん。えっちしたのってここじゃないでしょ?洗面ルームか風呂場?」 「っ、うるせーっ、余計なお世話だっ」 「ふふ。図星だ。じゃあ俺らとおんなじことしてたんだ?」 ……なぬ?

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