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バレンタインデー特別番外編「幸せな誤算」54
祥悟は、はぁ~っとこれみよがしに大きなため息をつくと
「往生際が悪いよね、暁くん。多数決で君の負け。いい加減に覚悟決めたら?」
「だから何の覚悟だよっ?おまえの言ってることはめちゃくちゃだっての」
「ふーん。わかった。暁くん、本当は自信ないんでしょ?智也と比べられたらナニがちっちゃいのがバレちゃう、とか?」
嘲るような祥悟の言葉に、暁は目を剥いた。
「ばっ、ふ、ふざけんなっ。誰のナニがちっこいっつーんだ、失礼な」
「じゃあ雑なえっちしか出来ない、とか?」
「馬鹿にすんな!俺のえっちはめちゃくちゃ丁寧で濃厚だっ」
「だったらその証拠、見せてよ?」
うっかりムキになって挑発に乗りかけている。だが、愚息やえっちの仕方に難癖をつけられて、黙っていたら男としてのプライドがズタズタだ。
ぐぬぬ……っと唸っていると、祥悟が立ち上がり、暁の目の前にきた。
顔をあげると、細い指が伸びてきて顎をついっと撫でられる。
「うっ、……触んな」
パシっと払い除けると、祥悟はにっこりと微笑んで
「キスして?暁くん。俺でも雅紀でもいいからさ」
「俺がキスすんのは雅紀だけだ!」
「あっそ。じゃあ見ててあげるからエロくて濃厚なのをお願いね」
暁は腕の中の雅紀を見下ろした。ふっくら可愛い唇をじっと見つめてみる。
雅紀の唇は可愛い。小さいがふくっとしていて、いつ見ても吸い付きたくなる美味しそうな唇だ。むろん、キスしたい。だが……
……や。だからなんで2人に見られながらしなきゃいけねえんだっつの。
「……暁さん……。俺とキスするの、嫌?」
小さな唇が動いて不安そうな声が出る。
……嫌とか、そういう問題じゃねえし。あ~っ、くそっ。
暁は雅紀の肩を掴むと、顔を寄せた。ふっくらした魅惑の唇にそっと口づける。雅紀が首の後ろに手を回し、かじりついてきた。触れ合う唇がしっとりと重なる。
「ん……ふ……ん……」
啄みながらキスが徐々に深くなる。雅紀の唇がうっすらと開いて、小さな舌が誘うようにちろちろ動く。
……ああ……やっぱいいぜ。雅紀とのキスは、すげえ蕩ける。
などとうっかりデレながらも、自分たちをじっと見守る2人の視線が気になって、薄目を開けた。
「んぅ……ん……」
雅紀の鼻から微かに漏れる愛らしい吐息混じりの声。こんなエロ可愛い声を、自分以外の男たちに聞かせるなんてもったいない。
「ふーん……。雅紀の声、いいね。すごく色っぽい」
覗き込んでくる祥悟を横目で睨みつけ、見えないように雅紀の顔を手で隠した。
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