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バレンタインデー特別番外編「幸せな誤算」55

雅紀は閉じた目蓋を縁取る長い睫毛を震わせながら、ちうちうと舌に吸い付いてくる。 可愛い。愛しい。気持ちいい。 ……こんな状況じゃなければ。 暁は祥悟の視線から雅紀を手で庇いながら、口付けを更に深くした。 「ふふ。なるほどね。雅紀って想像以上に可愛い反応するんだ?」 ……っるっせぇ。黙ってろ。 とにかくこのキスでこんな茶番はおしまいだ。せっかくの特別な夜なのに、いつまでも祥悟の戯れに付き合っている義理はない。 こんな状況でも可愛い仔猫ちゃんとキスしてるだけで、下腹が軽く熱を帯び始めている。とっとと邪魔な2人を追い出して、さっきの続きに突入したいのだ。 舌を絡ませ転がしながら、雅紀の甘い蜜をしっかり味わって、暁はそっと口付けをほどいた。雅紀はゆっくりと目を開け、少し潤んだ瞳でじっと見つめてくる。 その表情が可愛らしくて、暁は唇にちゅっとおまけのフレンチキスを落とした。 「さ。これで気が済んだろ?もう部屋に帰っ」 「で?お次は?キスの後。どうするのさ?」 こちらの言葉を遮り、祥悟が畳み掛けてくる。暁はムッとして 「次なんかねーぞ?これで終了。おまえらにこれ以上見せてやる義理は…」 「じゃ、いいよ。暁くんはあっち行ってて。続きは俺が雅紀とするからさ」 祥悟は再び遮ると、隣にドサッと腰をおろしていきなりこちらの身体をグイッと押した。不意をつかれ、雅紀を抱きしめたままベッドに仰向けに倒れ込む。 「おわっ、なっ、何しやがるっ」 慌ててシーツに手つき身を起こそうとするより先に、腕の中の雅紀を奪い取られそうになる。暁は雅紀の腕を焦って掴んだ。 「もお~。離してよね、根性なし」 「誰がだっ。おまえこそ雅紀を離せっ」 雅紀を抱き締め直そうとした時、祥悟の蹴りが弁慶の泣き所にクリーンヒットした。 「っっっってぇ~~っ」 靴の先で思いっきり蹴られて、あまりの痛みに腕の力がゆるむ。その隙をつかれて雅紀を奪い取られた。 「智也、雅紀連れてそっち行ってて」 雅紀を智也に押し付けて、祥悟がすかさずのしかかってきた。 「ばっ、何やってんだ!どけっ」 もがく暁を意外な馬鹿力でねじ伏せながら、祥悟が膝に跨ってくる。 「暁くん、うるさいっ。喚くと口縛るよ?」 「うるせー!どけっ、雅紀を返せっ」 いくら華奢といっても、そこそこ長身の男なのだ。膝にがっちりと乗り上げられ、無防備な体勢のまま体重をかけて押し倒されては、そう簡単には跳ね除けられない。

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