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バレンタインデー特別番外編「幸せな誤算」56

「君が、変に、抵抗するのが、いけないんでしょ?」 「抵抗するに、決まってるっつの。俺は、絶対に、4Pなんか、しねーぞ!」 押しのけようともがく自分と押さえつけようと必死な祥悟の、馬鹿馬鹿しい攻防戦は続く。 何とか形勢逆転まで持って行きかけた時、下腹に鋭い痛みが走った。 「……っっっ!」 祥悟の膝が、モロに愚息を直撃したのだ。 「大人しくしてて」 「っく、ってぇ~っ、やめろ馬鹿、玉が、潰れる!」 細い膝頭でグリグリ抉られて、暁は悶絶した。 「ね……真名瀬さん?」 「なんだい?雅紀くん」 「俺って、真名瀬さんから見て、少しは魅力……あります?」 「ふふ。少しどころじゃないよ。君はとっても魅力的だ」 「わ……ほ、ほんとですか?」 ベッドの上でくだらない取っ組み合いをしている2人の耳に、何やら甘く囁き合う智也と雅紀の声が聴こえてきた。 2人同時にぴたっと動きを止め、顔を見合わせた後で、今度は恐る恐る声のした方に目を向ける。 智也と雅紀はいつの間にか、窓際のカウチに並んで腰をおろしていた。 お互いに手を取り見つめ合い、何故か2人だけの世界を構築している。 「……ま……雅紀……?」 「…は?……智也、なにやってんのさ」 思わず2人同時に呟いていた。 「もちろん。本当だよ。以前からずっと、気になっていたんだ」 「お……俺も……俺もです。真名瀬さん」 「智也、って呼んでくれていいよ」 2人の甘い睦言は、こちらを完全に無視して続いている。 暁は呆然とし過ぎて、固まっていた。 ……何だよ……それ。雅紀……おま、どーして 肩を掴む祥悟の指の爪が、ギリギリとくい込んできた。ハッとして思わず祥悟の顔を見上げると、見たこともないくらい悔しそうな表情で、窓際の2人を睨みつけている。 「キスしても、大丈夫かい?」 「あ……はい、えっと……」 暁は再び、窓際の2人に視線を向けた。 雅紀はこちらを見ない。 智也も知らんぷりだ。 2人のいつにない態度に、暁は妙な違和感を覚えた。 手を握り合いながら、ゆっくりと顔を近づけて行く2人に、祥悟があからさまな舌打ちをして身を起こす。 「智也っ。何やってんのさ?」 祥悟の放った鋭い声に、2人の動きがぴたっと止まる。智也がゆっくりとこちらを見た。 「何って……君がしようって言ったことだよ?」 「はぁ?そんなこと勝手にしていいって言ってないし?」 智也は苦笑しながら首を竦めて 「だって君、4Pをしようって、」 祥悟が膝から床に飛び降りた。ようやく解放されて、暁も急いで身を起こす。 「へえ?それで雅紀を口説いてるわけ?」 「うん。君だって早瀬くんと、お楽しみだろう?」 智也は穏やかにそう言って、微笑んだ。

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