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バレンタインデー特別番外編「幸せな誤算」58
智也は、はぁ……っとため息をつくと
「君は全然分かってないんだね。じゃあ分からせてあげる」
智也は言いながら立ち上がり
「君、俺の大事なこの身体を、さっき早瀬くんに触らせたよね?俺が見ているのに、早瀬くんとわざとじゃれあってみせた。だから……お仕置きだな。ここで、彼らの目の前で俺に抱き潰されたい?それとも部屋に帰って抱かれたい?」
祥悟はそっぽを向くのをやめて、智也をまじまじと見つめた。
「……なに、それ。おまえ、怖いんだけど?にこにこしながら言うセリフかよ……」
「どっち?俺はどちらでもいいよ」
祥悟はちらっとこちらを見た。
「……部屋、戻る」
「よし。いいよ。じゃあ行こう。……あ。そうだ。ひとつだけここで罰だよ。俺にキスして?早瀬くんの前で」
祥悟はバツが悪そうな顔で、またこちらをちらっと見てから、智也に視線を戻し
「俺から?」
「そう。君からだ。とびきりエロくて濃厚なヤツをね」
祥悟は首を傾げ少し考えてから、素直に智也の頬を両手で包んだ。
「おまえさ、わざとだったんだな」
ようやく嵐が去って、暁はほっとして雅紀の身体を抱き寄せた。雅紀は膝に跨って、こてんと顔を胸に預けてくる。
「何がですか?」
「こら。とぼけるなよ。真名瀬さんと示し合わせてさ、祥悟にヤキモチ妬かせただろ?」
雅紀は胸にもぞもぞと顔を擦り寄せながら
「うん。祥悟さん、真名瀬さんの気持ち、確かめるようなことばっかりするから……。でも……俺がヤキモチ妬かせたかったの、暁さんの方です」
「は?俺にかよ?」
「だって、暁さん、祥悟さんの女装に見蕩れてたんですよね?」
拗ねた口調で文句を言われて、暁は頬を引き攣らせた。
……やっぱまだ怒ってたのかよ?つか、女装にっつーより、見蕩れちまったのは尻にだけどな。
ぷりぷりと魅惑的に動く形のいい尻に、無意識に目がいってしまうのは……男のサガなのだ……とは言えない、口が裂けても。
「んじゃさ、おまえも俺に、お仕置きするか?」
途端に雅紀はひょこっと顔をあげ
「いいんですか?お仕置きしても」
キラキラと目を輝かせる雅紀に、暁はたじたじとなった。
「や……やっぱ今の、なし」
雅紀はくすくす笑いながら、こちらの唇を指先でつついて
「でも祥悟さんって、やっぱり可愛いですよね」
「あいつが?何処がだよ?」
暁が嫌そうな顔をすると、雅紀はふふっと笑って
「一生懸命、真名瀬さんに恋してるところ」
暁は一瞬目を見張り、思わず頬をゆるめた。
「ああ。まあな。素直じゃねえけどさ、真名瀬さんにゾッコン惚れてるよな、あいつ」
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