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バレンタインデー特別番外編「幸せな誤算」60※
ガウンの隙間からそっと指を差し入れ、雅紀の素肌の滑らかな感触を指先で楽しむ。
「さっきのさ、真名瀬さんの言葉、よかったよな。君が思うよりずっと俺は君を好きだってやつ」
雅紀は擽ったそうにもじもじしながら、悪戯している指をきゅっと握って引っ張る。
「ふふ。格好よかったですね、真名瀬さん。言葉が自然に出てる感じで。心から想ってるんだなぁって、聞いててすごく分かる」
「だな。あの人は絶対にブレねえんだよ。穏やかで控え目に見えても、出逢ってからずーっと、あの人は祥悟だけ見て愛してきたからさ。上っ面な言葉なんかじゃねえ。ずっしり響いてくる本当の気持ちだ」
雅紀は胸元の手をぐいっと引っ張り出して、スリスリと頬ずりすると
「あのね、暁さん。2人のキス見てたら……ちょっとムズムズしちゃいました」
「お。したくなっちまったか?」
「……うん。俺も、暁さんと、いっぱいキスしたい」
「ふーん?キスだけかよ」
暁がニヤニヤしながら目を覗き込むと、雅紀はますます目元を赤く染めて
「ううん。えっちも……したいです」
言ってから、雅紀は照れたように胸に顔を埋めた。髪の毛の合間から見える雅紀の耳が、紅くなっている。
……うはぁ……大胆なこと言っといて何照れてんだよ。可愛いっつの。
「んじゃ、しようぜ?めちゃくちゃ気持ちいいキスとえっちをさ」
暁はニマニマしながら囁いて、ガウンの紐に手を伸ばした。
部屋に戻ってもう数分経つのに、智也はエロいことをする気配がない。祥悟がソファーに腰をおろすと、ルームサービスに電話を掛けて飲み物を注文してから、スタスタと洗面ルームに行ってしまった。
……怒ってる……?……よな、きっと。
さっき暁たちの部屋でした、お仕置き宣言。その内容が気になって落ち着かない。
智也はいつも優しすぎるくらい優しいし、こちらの我儘は大抵のことは黙って許してくれる。声を荒らげることもないし、感情を剥き出しにしてくることもほとんどない。
だが……時折、変なスイッチが入ると、えっちの仕方が変わる。やけに強引でねちっこくなるのだ。
さっき窓際や鏡の前でエロいことをした時も感じたが、今日の智也は変なスイッチが入りやすい気がする。
……ってか、やっぱちょっとやり過ぎたかも。
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