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バレンタインデー特別番外編「幸せな誤算」71

にやっと笑ってそう言うと、智也は驚いたように目を見張った。 「おまえ、俺の身体をさ、超自分好みに開発しただろ。俺ってたぶん他の男に抱かれても、もう満足しねえんじゃねーの?」 「っ、祥、」 「気づいてないと思ってただろ?分かるっつーの。おまえがさ、ほんとはゲイだって教えてくれた時、気づいたんだよね。まだガキだった俺の好奇心利用して、おまえ、俺にいろいろ教えこんでただろ」 ものすごく焦った顔をしている智也の頬を、祥悟は指でぐにーっと横に引っ張った。 「すげえ悪い男だよね、おまえって。20年もかけて、俺のこと、自分以外とはえっち出来ない身体に、仕込んでくれたんだもんな」 恨めしそうに睨みながら呟くと、智也はますます動揺して 「っ祥、違うっ、…や、違わない…のかな。でもそれは、君のことが」 祥悟はくすくすと笑い出した。 「ばーか、動揺し過ぎだっての」 「っ、……ごめん」 「俺がおまえから逃げたいって言っても、許してくれないわけ?」 智也はせつなげに眉を寄せた。 「……そう、だね。逃げても追いかける。いや……逃がさないで閉じ込めてしまうかもしれない」 「それってさ、前におまえが書いた小説の主人公みたいに?そういう男、いたよな?相手が好きすぎてストーカーした挙句に、監禁してベッドに鎖で繋いじまってさ。何年も何年も飼い続ける男」 智也はますます弱った顔になり 「うん……そう、かな。あ、いや、あんなに酷いことはしないと思うけど……。というか、祥、君、あの小説、読んでたのかい?」 意外そうに言われて、祥悟は唇を尖らせた。 「これでも俺、おまえの書いたのは欠かさず読んでるんだけど?おまえの小説ってさ、割りとロマンチックで優しい雰囲気のが多いじゃん?ちょっと童話ちっくな。でもあれだけ、めちゃくちゃ異色な感じがして、すげぇ印象に残ってんの」 智也はどこかが痛むような顔をして、目を逸らした。 「そうか……。あれを、読んでいたのか」 「おまえがあの本書いてたのってさ、俺とこういう風になるよりずっと前だよな?セフレだった頃」 何となく感じてはいたのだ。最初に読んだ時には気づかなかったけれど。 あの話の中に出てくる監禁されたまま育てられ愛され続ける少年は、どこか自分に似ていると。 そして、監禁している男も、智也によく似ている気がすると。 「あれって、おまえの願望?あの頃、ほんとは俺のこと、監禁したかった?」 ちょっと残酷かとは思ったが、重ねて問い詰めてみる。 「あれは……フィクションだよ。でも……そうだね。苦しくて書いた小説だった。君とはあの時いろいろあって、少し距離を置いていた時期だったから……」

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