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バレンタインデー特別番外編「幸せな誤算」74※

暁が尚も食い下がると、雅紀は感じ始めている時特有のとろんとした目をして小首を傾げ、うーん……としばし考えていたが 「ないです。別に。暁さんがしてくれること、全部すごく……気持ちいいから……」 言いながら、照れて語尾が段々小さくなっていく。その表情も声も、見蕩れるほど愛らしい。 「や。なんかあんだろ~?もっと乳首の舐め方をこうして欲しいとかさ、入れた時にもうちょっと違う場所も突いて欲しい、とかさ」 暁はしつこく食い下がった。 こういうデリケートなことは、普段なかなか聞けないのだ。この際せっかくだから、改善点を聞き出しておきたかった。 雅紀は綺麗な弧を描いた眉をきゅーっと寄せて、更に首を傾げる。 ……や、おま、なにそのポーズ。横にこてんってひっくり返っちまうっつーの。 何をしていても、どんな表情も、本当に可愛い人なのだ。ついデレデレしてしまうのは仕方ないじゃないか。 「なあ、なあ」 「んー……あ。ひとつ、ありましたっ」 雅紀がそう言って嬉しそうに笑った。 「お。なんだ?どんなことだよ?言ってくれ」 顔を覗き込むと雅紀はくすくす笑って 「あのね……前からずっと、気になってたんです」 「うんうん」 「暁さんも……乳首って感じるのかな~?って」 「うんうん。……は?」 雅紀は目を細めて暁の胸をじっと見つめると 「だって……ずるいでしょ?俺だけいっつも乳首いじられて……なんか前よりおっきくなってきた気がするし。暁さんの乳首も……感じるようにしてみたい」 ……や、それ、して欲しいことじゃねーし。 暁はガックリして内心突っ込んだ。 「いや、雅紀、あのな」 「乳首……いじっちゃ、ダメですか?」 愛らしく首を傾げて、期待にきらきらした目を向けられて、暁はうーん…と唸った。 そのおねだりポーズはずるい。 そんな風に言われたら、何でもしてやりたくなる。だが…… 「俺のは多分、感じねーぜ?おまえのとは違うんだよ」 途端に雅紀はぷーっと頬をふくらませた。 「どうして違うんです?やってみなきゃ分かんないし。俺だって男だけど感じるんだから、暁さんのだっておんなじですよね?」 ムキになる雅紀に、たじたじとなる。 理屈はたしかにそうだが、自分の乳首が雅紀のソレと同じとは思えないし、雅紀みたいに感じてあんあんしてる自分は想像がつかない。

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