135 / 175
バレンタインデー特別番外編「幸せな誤算」89
洗面ルームの椅子にちょこんと腰をおろし、雅紀は祥悟のすることを観察していた。智也がやってきて、持参のメイク道具を祥悟に渡しながら、ちらっと鏡に映る自分を見て苦笑する。雅紀も思わず首を竦めて苦笑し返した。智也が後ろから覗き込んでいる暁を連れて行ってしまうと、祥悟はこちらを振り返り
「ね、雅紀、昨日の服は?」
「あ、それならそこに一式…」
祥悟はハンガーに掛けられたドレスと、その下のラックの上に畳んで置いてある下着を眺めて首を傾げた。
「先に下着だけ身につけちゃおうか」
「え…」
「ね、そのガウンの下って何も着てないわけ?」
「あ、えっと、トランクスだけ穿いて」
「ふーん。じゃ、まずはそっちの下着に着替えるよ」
祥悟は下着を摘み上げて
「これも暁くんの趣味?昨日と違うやつでしょ」
女性物の下着を両手でピラっと広げられて、雅紀はじわ…と頬を赤くした。
そう。替えの女性下着も、暁が嬉々として揃えた物だ。上品なデザインだが、レースとフリルとリボンいっぱいのブラとお揃いのショーツ。そして透け感がある薄いピンクで裾にフリルのついたキャミソール。暁は今日の為に急遽、わざわざネットで取り寄せていたのだ。
「なんていうかさ……趣味全開だよね。あのスケベ男」
呆れたような祥悟の言葉に反論はしない。雅紀も常々思っているからだ。
「じゃ、ガウンとトランクス脱いで、こっちに着替えてね」
こともなげに言われ、下着を膝の上にぽんっと投げ置かれて、雅紀は驚いて祥悟を見上げた。
……え……今、ここで?祥悟さんの見てる前で……?
それはちょっと……恥ずかしすぎる。
目が合うと祥悟は怪訝そうに首を傾げた。
「なに?その顔。そんな驚くこと、言った?」
「え。や、だって、ここでですか?祥悟さんの見てる前で?……それは……ちょっと」
吃って顔を真っ赤にする雅紀に、祥悟はますます不思議そうな顔になり
「そんな恥ずかしがることかよ?…あ、そっか。普通は恥ずかしいのか?」
そういえば祥悟は元モデルだ。ショーなどでは、楽屋で人の目気にせず素早く着替えたりするらしいから、人に素肌を晒すのは抵抗がないのかもしれない。
「じゃ、えっと、そっち向いててください」
「んー。了解」
祥悟は素直にくるっと背を向けてくれた。
雅紀はちらちらと気にしながらガウンを脱ぎ、トランクスをおろす。いったん洗面台に置いたショーツを恐る恐る摘みあげ、思わずため息をつく。
…こんなちっちゃいの。アソコがはみ出しちゃう気がするんだけど……。
ともだちにシェアしよう!