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バレンタインデー特別番外編「幸せな誤算」102

「うわ。すごい。ふわっふわのトロトロじゃん」 目の前で焼いてもらったこのホテル一番人気のパンケーキを前に、祥悟が子どものように目を輝かせる。 この顔が見たかったのだ。 祥悟の嬉しそうな笑顔を横目に、智也は心の中でガッツポーズしていた。 「他に気になるもの、あるかい?」 プレートを手に歩きながら尋ねると、祥悟はうーん…っと首を傾げ 「や。まずはこれ、食いたい」 「わかった。じゃあ先に席に戻ってて」 頷いて歩いていく祥悟の綺麗な後ろ姿を見送ると、智也は空のプレートを手に、祥悟が関心を示していた物を片っ端からプレートに盛り付けていった。 少し遅れてテーブルに戻ると、祥悟は既に食べ始めている。甘いものを頬張っている彼の表情は、出逢ったばかりの頃の彼と変わらない。蕩けそうに幸せそうな祥悟の表情を見ているだけで、こちらまで幸せな気分になれる。 「どうだい?味は」 プレートをテーブルに置きながら智也が腰をおろすと、祥悟は口をもぐもぐさせながら 「美味い。これ、食感がヤバい。智也も食ってみろよ」 言いながらひょいっとこちらのプレートを覗き込み 「なにおまえ、これ。甘いもんって苦手だろ?」 「うん。これは、君の分。もう1回、自分のを取ってくるよ」 再び腰を浮かすと、腕をガシッと掴まれた。ちょっと驚いて見下ろすと祥悟はにこっと笑って 「これって俺が食いたいって言ったのばっかじゃん。おまえって優しいよな。さんきゅ、智也」 頷いて歩きながら、智也は顔がにやけてきて仕方がなかった。 ……うわぁぁぁ…可愛い。祥。なんて笑顔するんだよ、君。 昨日の夕方に来て1泊しただけとは思えぬほど、バタバタといろいろあったが、やはり一緒にここに来られてよかった。 プレートを手に取り、ぐるっと一回りしながら、今度は自分の好みの物を皿に盛って行く。途中で暁と雅紀が仲睦まじく連れ立って回って歩いているのとすれ違った。彼らもとても楽しげで幸せそうだ。つくづくお似合いの2人だな…と思う。 彼らの目にも、自分たちはそんな風に映っているだろうか。 もしそうならば嬉しい。 祥悟に出逢って一目惚れして、ずっと片想いのまま、それでも彼の側から離れることは出来なかった。苦しくて哀しくて何度も諦めようとした。あの頃の自分に言ってやりたい。 おまえの想いは通じたんだぞ、と。 今、こんなにも満ち足りて幸せなのだと、教えてやりたい。

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