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バレンタインデー特別番外編「幸せな誤算」105(最終話)

「お、雅紀。あれ、見てみろよ。……そっとだぜ」 囁く暁に目配せされて、雅紀は口をもぐもぐさせながら彼の視線の先を辿った。 隣のテーブルの2人が、自分たちと同じことをしている。 ……うわ……。 「祥悟のやつ、照れてそっぽ向いてやがる」 にやにやする暁を、雅紀は睨みつけた。 「そういうこと、言っちゃダメです」 ちょっと嫌そうな態度を取りながらも、祥悟はすごく幸せそうだ。見つめる智也の眼差しも、蕩けるように優しい。 2人を見ているだけで、甘い幸せをお裾分けしてもらったように心がぽかぽかする。 「2人とも、と~っても幸せそうですね」 雅紀がむふふ…っと笑うと、暁が身体を寄せてきて耳元で囁く。 「俺らもさ、あいつらに負けねえぐらい、幸せだろ?」 雅紀は暁の目を見て、こくんっと頷いた。 朝食を済ませ、部屋に戻って荷物をまとめると、チェックアウトの為に一階のフロントに向かう。 フロントには、既に智也と祥悟が並んで立っていた。 暁と雅紀が近づくと、祥悟が目敏く気づいて振り返り 「へえ。もう帰るんだ?もっとゆっくりしてけば?」 「おまえらこそな。俺らは帰って、明日の店の仕込みとかあるんだよ」 「ふーん。ね、暁くん?」 「う……。なんだよ」 「楽しかった。君らと一緒に過ごせてさ」 また絡まれるのかと身構えていた暁が、拍子抜けした顔で黙り込む。祥悟はこちらにも目を向けて柔らかく微笑み 「いろいろお邪魔してごめんね、雅紀。でもさ、一緒に参加出来てよかったし」 「俺もです、祥悟さん。また機会があったら、今度は一緒に旅行とか、してみませんか?」 雅紀の提案に、祥悟は一瞬驚いたように目を見張ったが 「ふふ。いいね、それ。どっか良さげな温泉とかさ、景色のいい観光地とか回って、のんびり遊んでみたいよね」 祥悟はそう言って、ふわっと嬉しそうに微笑む。 「はい。ぜひご一緒に」 チェックアウトを済ませた智也が歩み寄ってくると、祥悟は暁の顔を覗き込み 「じゃね、暁くん、お先に。仕事、頑張ってね」 「お……おう」 手を振りながら智也と並んで立ち去りかけたが、立ち止まってくるっと振り返ると 「あ、そうだ。雅紀。例の約束、忘れないでね」 にやっと笑いながら余計なひと言を置き土産にして、颯爽と行ってしまった。 「……雅紀。例の約束って、何だよ?」 地を這うような暁の声音に、雅紀はきょとんっと首を傾げる。 「んー……分かんないです。俺、別に何も約束なんか、してないですけど……」 「ち。何だよあいつ。意味深なこと言いやがって」 「暁さん。それよりチェックアウト済ませて、早く帰りましょう?俺たちのお店に」 暁は首を竦めると 「おお。そうだな。とっとと帰っていちゃこらしようぜ。俺らの愛の巣でさ」 「んもぉ~。暁さんのお馬鹿っ。そういうこと、大きな声で言わないっ」 ー完ー ※これにてバレンタインSS、完結です。 随分長いこと掛かってしまいましたが、最後までお付き合いくださって、ありがとうございました(*_ _) 祥悟が最後に念を押した雅紀との約束。 おそらく次の番外編で 詳しく綴ることになると思いますよ。 彼ら4人の露天風呂温泉旅行ネタなんかも、そのうち書いてみたいと思ってます。 月うさぎより

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