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「吐息のようにKissしてよ」2
「ふーん……。じゃ、要するに、飽きたから離婚したんだ?」
祥悟の直球な物言いに、智也はひやっとして惟杏さんの顔色を窺った。
だが、惟杏さんはまったく動じる様子もなく、微笑みながら首を竦める。
「うーん。いろいろあったけど。要約しちゃうと、そういうことになっちゃうのかなぁ」
さばさばと割り切った感じなのは相変わらずだ。この人は昔からそうだった。
「でも、結婚して幸せになりたいって言ってたじゃん。俺のこと振ったのも、それが理由だったでしょ」
祥悟はなんだか不貞腐れたような顔で、ストローの袋を指先でいじりながら言い放つ。
智也は目を見開き、心の中で「おいおい」と突っ込んだ。以前親しい間柄だったのは事実だが、今はカレシらしき男が同席しているのだ。
惟杏さんはくすくす笑い出して
「も~。どうしたの?祥悟くん。今日はやけに絡むわね。昔のこと、蒸し返したりして、らしくないわよ」
まったくだ。さっきから祥悟は全然らしくない。街中で知り合いを見つけて、わざわざ近寄っていって声を掛けたり、連れとの関係や相手の近況まで、根掘り葉掘り聞くタイプではないのだ。いつもならば。
「別に?俺はいつもと変わんねーし」
祥悟はムスッとした顔で、ストローでグラスの中身を掻き回す。
氷がぶつかるカラカラという音が、やけに大きく響いた。
「また今度、ゆっくりお食事でもしましょうね。じゃ」
惟杏さんは終始にこやかなままで、やがて、そろそろ映画の時間だからと言って、テラス席から立ち上がった。連れの男とこれみよがしに腕を組んで、手を振りながら通りの方に歩いて行く彼女の姿を、祥悟は黙って目で追っていた。
「どうする?俺らもそろそろ行くかい?」
智也がそっと声を掛けると、祥悟はくるっとこちらを振り返り
「あの男ってさ、結局はヒモってことだろ?」
「うーん。ま、話を聞く限りでは、そういうことだよね。彼女はお店やってて経済力あるし、彼の方はモデルやってるって言ってるけど、聞いてるとほとんど働いてないみたいだしね」
祥悟はふう…っと深いため息をつくと
「あーぁ。いい人なのにな……惟杏さん。あの人ってやっぱり、男見る目ないよね。またあんな男捕まえてさ」
「それでさっきから、イライラしてたの?」
「だってさ。あの人には俺、幸せになって欲しかったんだよね。すげぇお世話になったしさ。いろんなこと教えてもらったし。結婚してようやく落ち着いて、1人は絶対に子どもも欲しいって言ってた癖にさ……」
智也は、イラつきながらストローで掻き回す祥悟の手をそっと押さえた。
「何が幸せかなんて、本人にしか分からないよ、祥。惟杏さんは明るく話してたけど、結婚相手の方に難しい問題があったのかもしれないよね」
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