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どこまでも澄み渡る青空。
程よく風も吹き、暑くもなく寒くもない、言うなれば絶好のお掃除日和。
ゴールデンウィーク二日目の今日、連休中だというのにクリーン活動の集合場所である校庭は賑わっていた。
先日の中央委員会で担当エリアの割り振りは抜かりなく済ませた。
後は各エリアを統括する執行委員が指示を出し、道具を分配したらクリーン活動は開始となる。
校庭に立てた簡易テントの下でゴミ袋やトング等の道具を配る手伝いをしながら校庭を見渡してみると、かなりの人数が集まっていた。
学校指定の三色のジャージを着てるのは学生で、動きやすそうな軽装で来てるのは地域の住民。
正直、こういった活動に参加するのは始めてだ。
――案外人が集まるものなんだな。
「ゆずくーん、ちょっとこっち来て~」
声の方を向くとテントの外で一瀬先輩が手を振りながら呼んでいる。
黄色いジャージ姿でゴミ袋を振り回してるというのに今日もキラッキラしている。
長机や段ボールを避けながらテントの外に行くと、周りの女生徒たちが遠巻きにキャーキャー言っているのが聞こえてくる。
さすがプリンス様。
「人いっぱいいるけど大丈夫~?」
「…今のところは大丈夫です」
先輩に話しかけられたことで一気に注目を浴びちゃいましたけどね。
遠巻きに見られてるだけだし、集団で話しかけられたりするような余程のことがない限り大丈夫だろう。
「それならよかった~。 あのね、紹介したい子がいるんだけどいいかな~?」
「紹介、ですか?」
「前に話したでしょ~、書記ちゃんと会計くん~」
――思い出した。
確かに以前、生徒会のメンバーは後二人居ると言っていた。
普通に考えれば、生徒会が音頭を取って行っている行事に参加していないわけがない。
わざわざ声を掛けてくれたのは、突然紹介して僕がびっくりしないように配慮してくれたのだろう。
「今日来てるんだよ~。 いい子達だから紹介したいな~って思ったんだけど~」
予想外の人だかりと突然の出来事に動揺はしている。
けれど、昨日頑張るって決めたばかりだ。
苦手意識とか出している場合ではない。
「大、丈夫です。 お願い、してもいいですか?」
「もちろん~」
ドキドキしながら先輩にお願いしたら快く了承してくれた。
「あーやん、ポチ~、ちょっと来て~」
「はぁい」
「ハーイ!」
隣のテントに向かって一瀬先輩が呼び掛ける。
声に反応するように中から二人の生徒が出てきた。
お姫様みたいにふわっふわのロングヘアの女の人。
元気印って感じの男の人。
二人とも黄色いジャージだから先輩だ。
「二人に紹介しようと思って連れてきたんだよ~、ゆずくんで~す」
「高梨、柚琉です…。 よろしく、お願いします」
「「よろしく~」」
ざっくりとした説明なのは事前に話を通してくれているからだろう。
先輩の紹介に合わせてペコリと頭を下げると、声を揃えて挨拶を返してくれた。
「オレ、犬飼! 犬飼遊助(いぬかい ゆうすけ)!! 会長補佐と会計やってるんだ! よろしくな!」
男の先輩が犬飼先輩。
元気印の印象そのまんまだ。
「気軽にポチって呼んであげてね~」
「ポチ先輩?」
「そうそう~。 キャンキャン煩いからポチ~」
「違うからっ!! 犬飼だからだしっ!!」
「ほら煩い~」
「煌來、酷い…」
ポチという呼び方は許容してるのにその由来には拘りがあるみたいだ。
ポチ先輩はいじられキャラなのかな。
「ポチはもういいから私も紹介してちょうだい?」
女の先輩がスッと割って入ってきた。
優雅な仕草までお姫様っぽいのに、隣でポチ先輩が「もういいって酷いっ!」って騒いでいるのには一切気にする素振りを見せないところがすごい。
「あーやんは、書記ちゃんだよ~。 バスケ部のマネージャーもしてるんだよ~」
「吉川彩芽(よしかわ あやめ)です。 あなた、上原くんの幼馴染みくん?」
「あ、はい。 そう、です」
「やっぱり! 幼馴染みっていい響き♡ おまけにプリンスのお気に入りでしょう? どっちに転んでも美味しく頂けるわっ。 仲良くしましょうね♡」
あれ、話すとなんか印象が違う?
途中何を言ってるか分からなかったけど、ニコニコと笑う姿はやっぱりお姫様みたいに可愛らしい。
気のせいだったのかな?
「よろしく、お願い…します?」
若干疑問系になってしまった。
前に一瀬先輩が言っていた、書記の先輩がマネージャーをしている運動部ってバスケ部だったんだ。
後で瑛士にも教えてあげよう。
「ちょっと一瀬くんっ! あの子どこで拾ってきたの!?」
「屋上~」
「素敵♡ 無自覚天然系男子が拾えるなら私も今度行ってみようかな。 ねぇ、お気に入りってそういうことよね? そうなのよね?」
無自覚天然系男子??
「ん~? どうかな~」
「もうっ! あの子の幼馴染み、ハイスペックな俺様スパダリ系なのよ? ぽややんっとしてたら負けちゃうんだからっ」
「あーやん、半分以上何言ってるか分かんないよ!」
「うるさいわねっ。 ポチは黙っててっ」
半分どころか八割以上意味不明だ。
吉川先輩がおしとやかなお姫様に見えたのは幻覚だったみたいだし、ポチ先輩はまたしても「酷い…」としょげているし、一瀬先輩は相変わらずニコニコしてる。
これが生徒会の日常ならすごく楽しいだろうな。
「さてと~、そろそろ始まりそうだしお掃除しに行きますか~」
そうだ、今日はこれからが本番だ。
「よっしゃー! やるぞー!」ってあっという間に元気になったポチ先輩につられて、僕もやる気になってきた。
――クリーン活動、開始!
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