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episode5-13

「大切な人がいるのね。」 「………まあな。」 よく考えたら 俺が相手に痕をつけることはあっても 俺がつけられることは今まで1度もなかったかもしれない。 「………今はさ、こいつに夢中だから。」 首筋にできた赤い痕を、とんとん、と指でさしながら言うと 母さんは一瞬だけ驚いた顔をして そう、と笑った。 「すごい人なのねぇ、京にそんなこと言わすなんて。」 「……すごい奴だよ。」 こんなに人に振りまわされたのは初めてだってくらい 侑稀には毎日、取り乱されて、振り乱されてばっかりだ。 「その人が大切なのはわかるけど、もう少し実家にも帰ってきなさいよ?美玲が寂しがるから。」 「わかってるって。」 俺が言うと ほんとかしらねぇ、と母さんは呆れ顔でそう言った。 【京side.end】

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