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第2話 出会いの季節(2)
退屈な入学式が終わり、教室へと戻ってきた。担任の教師からの軽い挨拶が終わるとついに拷問の時間が訪れた。
そう自己紹介の時間である。
他人の自己紹介なんて1mmも興味が持てないし、ましてや自分の紹介なんて他人したくはない。これほど苦痛な時間はないだろう。席順で刻一刻と自分の番が迫ってくる中でふと気づいたが、僕の前の席に人がいない。そうあの髪の毛がカーニバルしている男の姿がなかった。
入学式まではいたのにもうバックレたのか・・・さすが不良ではあるな。
僕も体調不良かなんかでこの拷問を回避すればよかったかと考えているとついに僕の順番が回ってきてしまった。
ああ、パスとかできないだろうか。
なんて馬鹿な考えはやめて渋々と立ち上がった。
「染井 春樹 です。今後ともよろしくお願いいたします」
別によろしくお願いする気もないので、そんな最低限の情報のみを口にし、すとんと席へと座ると僕に申し訳程度の拍手が降り注ぎ、次の人へと順番が移った。
よし、これで僕に対して関わろうとするやつはいないだろう。
ミッションコンプリート。もう帰っていいのではないだろうか。
そんなわけにもいかず、数十分、席順に自己紹介が続き、ついに最後のクラスメイトの自己紹介の順番が来た。最後はあの爽やか巨人だった。
「吉野 咲良 です。中学校時代はバスケ部でした!」
ハキハキとよく通る声で吉野と名乗る巨人は期待に満ち満ちた笑顔で自己紹介を始めた。
「女の子みたいな名前ですが、覚えやすいと思うので見かけたら吉野でもさくらちゃんでもいいんで声かけてください!好きな食べ物はカレーとコロッケ。趣味は体を動かすこと全般。特にスポーツなら何でも好きです!つーわけで3年間よろしく!」
屈託のない笑顔をしつつ自己紹介を終えると教室の空気が一気に明るくなり、笑い声が漏れ始めていた。
運動部。明るい。他人から好かれそう。うん、僕の嫌いな要素しかないな。絶対に関わらないようにしよう。
その後は、担任から今後の予定の連絡があり、やっと帰宅する時間になるというところで、衝撃の事実が担任から僕に叩きつけられた。
「そういえば、来週委員会を決めるからそのつもりで。知ってると思うけどこの学校は部活か委員会のどちらかに必ず所属する決まりだから」
はい?
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