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第3話 出会いの季節(3)

 「今から、クラスで委員会に参加するものを募る。希望する者は紙に希望する委員会を書いてこの時間中に提出するように。定員オーバーしたら抽選で決めるので第3希望まで書くように。ではまず風紀委員の説明から始めるぞー。風紀委員とは・・・」  担任の教師が次々と委員会の説明をし始めてしまった。  入学式から4日後。  あれから色々と学校内の説明やら行事の説明やらで忙しく、結局のところ僕は入りたい部活も委員会も見つけることができずにいた。運動部は絶対にないが意外と文化部だって人数が少ないからこそ深い人付き合いが必要とされるものだ。人数が多い吹奏楽部に至ってはあれは文化部の皮をかぶった運動部である。  つまるところ部活という選択肢が無い。そのため、消去法で委員会に入るしかないのだが、結局決めきれずに現在に至るというわけだ。  今のところで言うと、最初に説明された風紀委員が定員が少なく皆がやりたがらない委員会なので、第一候補として考えているが、人のことを毛ほども気にしない僕が学校の風紀を守れるかというのは甚だ疑問である。  ああ、仕事が楽で人とあんまりかかわらないで済む委員会はないものか。  「次に美化委員会の説明をする。美化委員の主な仕事は校舎の清掃と花壇の手入れのみだ。なので毎日の仕事自体はぶっちゃけ少ないが当番の時は朝早く学校に来てもらうことになる。定員はわけあって2名のみ募集しているので、もし今立候補するものが2人だけいた場合自動的にそいつに決定する。立候補するものはいるか?」  あった。この委員会しかない。人数が最低の2人。仕事は楽そうだが朝が早いだろうから立候補するやつもいないだろう。そのため、僕は何のためらいもなく手を挙げた。  「お、染井、お前立候補か!よしじゃああと一人。誰か立候補するものはいるか。」    「はい。俺やります。」  不意に後ろのほうから低い、それでもよく通る声で返事が聞こえた。これから3年間一緒に委員会をする奴が誰か。恐る恐る振り返ると、まっすぐに僕を見つめているスポーツマンの姿があった。自己紹介で吉野と名乗ったその男は僕が見たことに気づくとうっすらと笑った。  今思うとこの出会いが、人嫌いな僕が少し前に踏み出す始まりであった。

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